この作品は、記憶を操作する人ならざる存在と、それを追う捜査官たちとの邂逅を描いた物語の一幕である。
〝カナエカナタ〟と呼ばれる〝それ〟は、まったく同じ姿をした二人の存在。
人の記憶を消し、また復元する力を持つ神である。
その所在を突き止めた捜査官・黛と真島。
しかし、人知を超えた能力の差を前にした彼らは対象の確保を断念し、逃走を選ぶ。
果たして彼らは、神から逃げ切ることができるのか。
物語の中で、カナエカナタが人に関わる理由や目的は明かされない。
善意なのか悪意なのかさえ判然とせず、ただそこに存在し、人と交わる。
この得体の知れなさが、いかにも神らしい存在感を醸し出しているのだ。
そんな神が追い詰めた二人に課すのは、各々の名前を当てるという、一見遊戯のような試練である。
そして、試された黛と真島が人知を超えた存在へ対抗するための武器は、異能力でも超常の器物でもない。
本作では屋上屋を架すような設定を用いず、あくまでも〝人〟の能力で神に対処する。
彼らが神に挑むために頼るのは、ただ人としての洞察力のみ。
その点が本作の大きな魅力だ。
描かれるのは、長大な物語の一場面を切り取ったかのような、奥行きを感じさせるエピソード。
それでいて語り口は軽妙で、難解さはない。
気軽に読み始められ、短時間で読み終えられる分量であるが、読後には作品世界の広がりと強い印象を残す作品である。
一読を推薦したい。
【レビューコンテスト応募】
「記憶を操る神」が刑事バディものになるとは思いませんでした。そしてとっても面白い。
廃ビルでの捜査から神との遭遇、そして「どちらがカナエで、どちらがカナタか」という謎解きまで、テンポよく物語が進みます。
ダレる瞬間がないので、全く飽きない。
特に最後の推理は能力ではなく行動原理から正体を見抜くもの。腕力や暴力ではなく、主人公側の知性が問題解決に至らせるのが素敵です。
「敵か味方かわからない神」との緊張感や、最後に敵意ではなく興味を示して去っていくカナエカナタの姿に、この続きが読んでみたい、そんな気持ちになりました。
とっても面白かったです。
【レビューコンテスト応募】させてください。