『白旗の向こう側』は、派手な英雄譚でも、分かりやすい成長物語でもありません。
あえてジャンルを分けるとしたら、鉄道現場を舞台にした職業小説でしょうか。
本作が描こうとしているのは、「何も起きないこと」を守るために、現場の人間がどれほどの緊張と責任を背負っていたのか、ということです。
印象的なのは、まえがきの時点で、現場を安易に美談化しない姿勢がはっきり示されているところです。危険をドラマの材料として消費するのではなく、なぜ規程があるのか、なぜ確認が必要なのか、なぜ安全という言葉が軽く扱われてはいけないのか。その問題意識が作品全体の芯であり、核であり、魂の叫び、あるいは祈りになっています。
「安全マニュアルは血文字で書かれている」が、
「この『白旗の向こう側』は、とある列車見張員の祈りで書かれている」
……と、私は思いました。
強くお勧め致します。
【レビューコンテスト応募】しておきますので、より多くの人の目に触れますように。