第2話 雷鳴、一閃
廃城を包む雨は、ますます激しさを増していた。
城門の外には帝国兵が十数名。
全員が重武装。
さらに後方には魔術師が三人。
ルシアンは静かに右目を開いた。
蒼い瞳が淡く光る。
未来が流れ込む。
兵が突入する。
三方向から同時。
魔術師は火球で牽制。
逃げ道を塞ぐつもりだ。
「……来る」
シンザンが雷切を肩に担ぐ。
「やるか…」
ルシアンは即座に答えた。
「三秒後、正面から四人。左右から三人ずつ。後ろの魔術師が火球を放つ」
シンザンが眉を上げる。
「ほう」
雷切が笑う。
『目か?面白い』
次の瞬間。
兵たちが一斉に突撃した。
「突撃!!」
――未来通り。
ルシアンが叫ぶ。
「右!」
シンザンが動いた。
速い。
いや、速すぎた。
踏み込みと同時に床石が砕ける。
雷切が青白く発光した。
バチッ――!!
雷が弾けた。
シンゲンの姿が消える。
兵士たちの視界から完全に消失。
次の瞬間には正面の兵四人をすり抜けていた。
静寂。
そして。
ガシャァン!!
四人の鎧が同時に裂け、吹き飛んだ。
「なっ!?」
左右の兵が動揺する。
ルシアンが次を読む。
(左から槍、右から剣)
「左低い、右上段!」
シンザンは振り返りもしない。
槍を紙一重でかわし、肘で兵の顔面を打つ。
骨が砕ける音。
続けざまに振り向きざまの横薙ぎ。
剣兵の武器ごと鎧を断ち切った。
雷切が嬉しそうに喋る。
『鈍い鈍い鈍い!』
『まだ六人いるぞ!』
後方の魔術師が叫ぶ。
「放て!」
火球が三発。
一直線に飛ぶ。
シンザンが笑った。
「雷切!切れるな」
『ああっ?誰に言うとる!』
雷切が轟いた。
「喰らえ」
シンザンが雷切を振るう。
雷鳴。
刀身から稲妻が奔る。
火球と激突した。
轟音と共に炎が裂ける。
爆風が廃城を揺らした。
兵たちは絶句した。
「魔術を……斬った……?」
ルシアンも息を呑んだ。
(なんだ、あの剣は……)
その隙を突き、兵のひとりがルシアンへ走る。
「皇子を殺せ!」
ルシアンの右目が未来を見る。
剣筋が見えた。
避けられる。
だが次の瞬間。
別方向から矢。
死角。
間に合わない。
兵の剣と矢が同時に迫る。
「しまっ――」
刹那。
雷が走った。
シンザンがルシアンの前に立つ。
剣を受ける。
矢を叩き落とす。
兵が吠える。
「化け物が!」
シンザンの眼が鋭く細まった。
「そうか」
雷切が低く笑った。
『見せてやれ』
シンザンが雷切を構える。
空気が変わった。
空が唸る。
雷が鳴った。
「我が国では」
シンザンが静かに言う。
「儂を――」
雷切が光を放つ。
雷が迸る。
雷切へ集束する。
青白い稲妻が刀身を覆った。
「雷喰いと呼んでいた」
一閃。
世界が白く染まった。
次の瞬間。
前方にいた兵全員が吹き飛ぶ。
壁ごと消し飛んだ。
沈黙。
雨音だけが残る。
帝国兵は全滅していた。
ルシアンは呆然と立ち尽くす。
「……強すぎるだろ」
シンザンは雷切を納めた。
「お前の目がなければ囲まれていた」
雷切が不満そうに言う。
『我の力が九割だ』
「黙れ、偉そうに」
『何じゃと?決着をつけてやろうか!新しい刀を用意しろ』
「『貴様!」!』
ルシアンは思わず笑った。
こんな状況なのに、笑っていた。
久しぶりだった。
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