怪我をした一羽の鳩・ポッポロとの出逢いが、花蓮と奏を結びつけた──
「鳩の降り立つところには幸せが訪れる」という言葉が、そのまま現実になったかのような始まりが美しい。
男勝りで浮名を流す花蓮。
穏やかで包容力のある動物病院の院長・奏。
そして10年後、火事で家族を失い、動物の心が読める少女・雛人が二人のもとへ迎え入れられる。
ひとつ屋根の下で重なり合う三人の感情は、深く、いびつで、切なく、そして確かに温かい。
花蓮の“僕”という一人称が示す揺らぎ、雛人の純粋さと孤独、奏の静かな愛情。
それらが絡み合い、家族とも恋とも言い切れない関係を形づくっていく。
鳩のささやきが導いた出逢いは本物だった。
だが、新たな出逢いが三人の運命を揺らし始めるとき、幸せを呼ぶはずの鳩が示す“本当の結末”がどこにあるのか、読者は息を呑んで見守ることになる。
少し不思議で、現代的で、優しくて痛い百合ドラマ。
多視点でじっくり描かれる感情の機微が胸に残る一作。