第36話 野外イベント

「あれから1年経つのね…」


 22歳となった秋に野外イベントなる、椎茸祭りが行われた。

 丁度好きな鳩を持って行ってもいいと社長から言われ、手ごろな鳩を捕まえる私。

 かえでも好きな鳩を持って、私の近くへ向かってくる。


 私は念動力を以って鳩と会話する。

 「どうしてあなた達は人間よりも速くに恋をするの?」と。

 すると鳩は「今夜、キャンプファイアーがあるので椎茸焼きなさい」と言葉にする。

 念じる事よりも先に言葉を発する鳩の様子はどう見ても人間に気を使っている様である。


 今夜は会社のイベントで椎茸合同記念会を催すに留まる。

 鳩は木の下でお互いの体を重ね、交尾をし、卵を産むまでに一定の活動をする。

 私達はその行動の一部始終を見ては生態記録を行うのである。


 外は涼しいのに何と暑い夜だろう…


 帰宅すればまた楓とミーティング。

 今回は熱意の籠った口調で主導者ぶるのであった。

 負けじと鳩の会話をパソコンに打ち込み終えると再び楓に押し倒される。


 このやりとりに、もう慣れてしまった。


 お風呂に入り眠る前にキス。


 愛してる……って。


 ――その翌日


 私の勤めるUSコンサル富之鳩とみのはと動物会社では、ある動物病院との共同事業が始まろうとしていた。


「会社の指示書を読んでくれたと思うけど、我がコンサルタント事業では主に顧客同士である事業主が以下のとおり、動物同士の様子を窺うようにテストしてるのよ」


三谷みたに部長、これって鳩が私達の様に求愛行動をして、再び大人になる形を取ると卵を産んで、新しい形態の模様に変えるという事ですか?」


「そう。我が社も形態を変える事で、同じ動物でも飼う側と飼われる側の違いに気付かなければならないという事ね」


 こんな時、かなでママが居ると面白いんだけど…

 動物同士の求愛行動だけでなく、生態本能を呼び覚ます程の愛情深さに時には攻撃したり、時には餌を求めたり、時には人間との関係を保とうとしたりして、同じ種族の共存を求めようとしているという事。


「どうかしら?」


 その答えを言ったのは楓自身だった。

 結神ゆいかみ社長の令嬢として伝えるべき時は伝える。

 この部署にとってありがたい存在とも言える。


「部長、今回は…」


「えぇ、知っての通り春井はるいさんの親族である春井奏院長の病院との合同事業となるわ」


 今回は春井動物病院との合同イベントと題して、医学的な目線が必要となっている。

 特別講師として奏ママが富之鳩に招かれていた。

 それも結神社長の許可を得ての事だった。


 ――というか、どうして社長とママが仲良くなれるの?

 花蓮かれんママにはちゃんと許可を得た?


 ――午前10:45


「来ちゃった」


 えぇ~、どうしよう。緊張するなぁ……

 そんな気持ちとは裏腹に、奏ママが三谷部長に言葉を交わす。

 大きなバッグに何かを入れている様子。


「春井です。私のがお世話になっています」


「三谷です。がどうもお世話になっています」


 この様にして挨拶をする。

 私と楓はもはや家族同然の付き合いとなっている。

 この部署は同性恋愛の可能な会社として成立している。

 こういった挨拶は度々ある。


「大したものではありませんが、結神社長へ渡しておいて下さい」


「いえいえ、大したおもてなしも出来ませんで…」


 手土産のようだ。

 ママは一体何を持って来たのだろう?

 だが!? あからさまに三谷部長の肩を揉む――


「この度のおもてなし、感謝しております」


「はぁ…ん、そこは…ぁあ…ッ!」


 これこそ、動物病院で得た獣医の性感マッサージ。

 二人して汗を滲ませ、先輩たちの目もくれずに交渉事を持ち出す。

 それも頬を染めて…

 楓もこの様子にピンときた様子で私に話し掛ける。


雛人ひなと、あなたのママは何であんなにエクスタシーなの?」


 そりゃ、毎日のように何十匹もの動物を労わり保護をして治療に専念しているからとしか言いようがないよ。それよりも、合同事業についてお話あるんでしょうに。


「三谷晴子はるこ…あなた、最近の動物病院が産卵豊富な出来事に他の事業所も顔を抱え、子孫繁栄に注目し出した事を知ってて…?」


「あ…っ、ハァ、ハァ……、し…、知っています。雄と雌が暴走し、やがて子を宿し、同性での生き方を模索していると…」


「もし、そんな状態で動物が野に放たれると、新たなコロニーを確保する必要があるわ。檻の中で一生暮らす男性と女性……いえ、同性のコロニーが作られるの…」


 野に放たれた野獣奏ママ野性三谷部長がこの様にして社長との面談以前にお互いの性感を楽しみ合う。見せつけられている私達が頬を赤らめ、同僚達と悶絶していく様に、彼女達も新たな境地へと向かうのだった。

 こんな様子を花蓮ママが見たら修羅場になるだろうと思うけど……、常に花蓮ママの浮気癖を矯正している奏ママがあんな風にこんな事をしているのをどう思うだろう? これがもしポッポロだったら……?


「晴子…、私達は同類よ…。そして、動物に関して理解を深めることが出来るわ…」


「奏ぁぁーー、も、もう私達は、ど…動物そのものよぅ…、そこツボに入るわぁーー…」


 ◆


 こうして野に放たれたイベントは私達の知らない場所で行われる事になった。

 再びロビーで楓に押し倒された私も、甘いキスの深みに入ってゆくのだった。


「あぁ…ん、楓ぇえ~…」

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