第14話




「ほら、出来たぞ。アリア」


 俺は出来上がった一丁の銃をアリアに手渡した。


「これが……私、専用の銃……」


 アリアは食い入るように銃を見つめる。


 銃身は真っ黒であり、ずっしりとした重量感を持っていた。


 長さは約80cm程であり、一般的な銃よりも短い。

 アリアは体がそこまで大きくないため、銃身が短いほうが取り扱いが楽だと思い、銃身を短くできるように試行錯誤してみたのだ。


「どうだ? 重さや大きさは」


「うん……凄く丁度いい。でも……これ、銃身が短いけど、威力や精度は大丈夫なの?」


「それに関しては任せてくれ。この状態でも十分、遠くには飛ぶし、威力も申し分ないんだが……遠距離を狙う用に、こんなものを用意したんだ」


 俺はアリアに、真っ黒の筒を手渡す。


「これは……?」


「これは、もう一つの銃身だ。この銃は銃身だけを付け替えられるようにしてるんだよ」


 俺はアリアの前で銃を少し弄ると……簡単に銃身だけを外してみせた。

 代わりに別の銃身を取り付ける。


「遠距離を狙う時は、こっちの長い銃身に付け替えてくれ」


「す、凄い……! 銃身を付け替えられる銃なんて、初めて見た……!」


「だろ……!」


 次にアリアが試しに引き金に手をかけると……手に馴染んだのか満足げな表情を浮かべた。


「凄く良い……クライン、ありがとう……!」


 アリアは嬉しそうにパァッと笑みを浮かべ、銃を抱きしめた。


「一応、俺の方でも試し撃ちは何回かしたが……アリアの方でも試しに撃ってみてくれないか?」


「ん。わかった。でも……この銃、弾はどうすればいいの?」


「ああ、それはだな……」


 俺はアリアに弾の入れ方を説明する。


 この銃もラディアに渡したものと同じく銃の上部からリロードする形式だった。


「……相変わらず、凄いリロードの仕方。凄く効率的で……良い」


 アリアは感嘆の声を漏らすと……弾をリロードし、慎重に的へ狙いを定める。

 そして――引き金を引いた。


 発射された銃弾は一瞬で、見事に的に命中する。

 次の瞬間――的がした。


「ま、待って……? 今、なんで的が爆発したの……!?」


「ふふっ、実はな……今回使った銃弾には火魔法の〈爆破エクスプロージョン〉を付与しててさ」


 結果、着弾した瞬間に爆発したのだ。


「銃弾に……付与魔法を……!?」


 アリアは驚愕で目を丸くしていた。

 どうやら、アリアを驚かせるのには成功したみたいだな……!


「一応、この銃弾とは別で空間魔法の〈断裂〉を付与した銃弾も渡しておくから、使い分けてくれ」


「空間魔法……!? なんかもう、ツッコむのに疲れてきた……」


 アリアは呆れたように深く溜め息をついた。


 そんなにか……?

 俺はアリアに喜んでもらえるように、色々と出来ることをやってみただけなんだが……。


「もう銃の仕組みについては聞かないでおく。絶対にクライン、意味のわからないこと言い始めるから」


「ええっと……わかった」


「それと、クラインは絶対にもう少し自重した方が良い。こんな技術……貴族や王族が寄って集って欲するレベル」


「そうなのか……?」


 ずっと山に籠もっていたせいでイマイチ、自分の技術の凄さがわからないのだ。


 ただ……最初はラディアにも驚かれたし、この世の中では異常な技術力であることは間違いないんだろうな。

 ……言われた通り、少しは自重するか。


「あ、でも、私の銃には自重しなくていいからね?」


 アリアは上目遣いで、赤い瞳を俺に向ける。


「はいはい、わかってるよ」


 俺はクスリと笑い、アリアの頭の上にポンと手を置いた。


「ん……今、絶対に子ども扱いした」


「まあ……実際に子どもにしか思えないというか……」


 アリアは150歳以上らしいが……正直、リリスよりも子どもっぽく感じるんだよなぁ……。


「むっ……大人なレディの私に失礼」


「いや、本当の大人なレディは、自分で大人なレディって言わねえよ……」


 思わず、苦笑が漏れた。


 そうこうしていると……いつの間にか、すっかり日が落ちて周りが暗くなっていることに気づいた。


「アリア、そろそろ帰らないか? あんまり夜中まで外にいると……ラディアがうるさくってさ」


「クライン、ラディアの尻に敷かれてるの?」


「うっ……そ、そんなことないと思うけど……」


 とはいえ否定し切れないのが悲しい現実だ……。

 ラディアには、色々と世話になってるからな……。


「と、とにかく……! 帰るぞ!」


「ん。わかった。クラインのこと宿まで送っていく」


「おお、助かるよ」


 俺達は工房を出て、宿の方へと歩みを進めていく。


 工房は街の外れにあるため、道中は人通りが少なかったり、治安が悪そうだったりするのでアリアが居てくれるのは凄く助かるんだよな。


「……とはいっても、流石に誰かに襲われたりはしないか」


「……クライン。それは多分、今までが運が良かっただけ」


 アリアは眉をひそめて、俺の言葉を否定した。


「そうか?」


「うん。だって……今、後ろから何人かが私達をつけてきてるから」


「へっ?」


 思わず背後を振り返ると――強面の男が4人、ニヤニヤと笑みを浮かべながら立っていた。

 まさか――俺を狙いに来たのか?


「……おうおう、流石に気づかれちまったか」


 男の一人が腰から剣を抜き、舌なめずりをする。


「おいお前、女と持ち物、全部置いていったら見逃してやるよ」


「っ……」


 ということは……こいつらは俺を狙ってきた魔法使い……ではなく、ただのチンピラか?


「なんだ……心配して損した」


「あン? なんだお前……! 舐めてんのか!?」


 俺は質問には答えず、無言で懐から電撃銃を取り出す。


 迷わず、男たちに電撃銃を発射しようとするが……それを、横から伸びたアリアの手が制した。


「待って。これ……試し撃ちする丁度いいチャンスかも」


「た、試し撃ちするのか? 人間相手に……」


「大丈夫。殺しはしないから」


 アリアは俺から受け取ったばかりの銃を構え……男たちに銃口を向ける。


「なんだァ? 何かと思ったら、時代遅れの魔銃じゃねえか! そんなカス武器で粋がってんのかよ……! 笑える――」


「――うっさい」


 男が笑い出した――瞬間、アリアが言葉を遮り、引き金を引いた。


 刹那、銃弾は男の右頬をわずかに掠った。


「て、てめぇ……何を……!」


「次、ふざけたことを言ったら本当に当てる。今回の威嚇射撃」


「っ……」


 男は怯んだような表情を浮かべるが……すぐにニタリと唇を歪ませた。


「ははっ! こんなんでビビると思ったか! 魔銃はリロードに時間がかかるって知ってんだよ! お前ら、一斉に襲いかか――」


「――ほんとにうっさい」


 引き金が引かれると同時に、銃弾は男の右耳を貫いた。


「ぐぁぁぁッ!? なんでだ……リロードが必要なはずじゃ……」


「私の銃はオーダーメイドの特別製なの。リロードなんて不要」


「なッ……」


 男は右耳を押さえながら、怯えた表情を浮かべ……背を向けた。


 逃げる気か。


「そうはさせないぞ」


 俺は逃げようとする男の背中めがけて電撃銃の引き金を引いた。


 銃口からは雷が迸り、男は気を失って地面に倒れた。


「ひ、ひぃぃぃ! なんだ、こいつらの武器!」


 他の三人の男たちも逃げようとしていたが……当然、電撃銃で全員、気絶させた。


「ふぅ……弱くて助かったな」


「ん。魔法使いや冒険者が相手だったら、こうはいかなかった」


 そうだよな……。

 今回は倒せたからって、油断しないようにしなければ。


「まあ、取り敢えず、衛兵を呼んでくるか」


「ん。面倒だけど……そうする」


 俺たちは、その後、衛兵を呼び……事情を説明した後に帰路についた。


 しかし――






「――へえ、これが噂の銃職人が作る銃か……」


 上空から一部始終を見下ろしていた存在に気づくことが出来なかった。




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