ヴィンテージとは、当たり年のことだ。けれど主人公にとって、本当の当たり年は、ワインの収穫年ではなく、あの人と出会った年そのものだったのかもしれない。硬く、尖っていた若い日々。年を追うごとに角が取れ、深みを増していく味わい。それを二十年間、桜の下で確かめ続けてきた。閉じていた香りが、雨宿りの時間を経てゆっくりとほどけていくように、あの日の記憶もまた、静かに開いていく。最後の一本を開けたこの日、答えはもう出ている。
作者様が得意とする食を、映像として綺麗に繋げた作品です。余白に思いを馳せるのもよし、美しい風景を想像するのも、またよい。年代物のワインのような深みを楽しませてくれます。あなたの忘れられない人を想いながら、読んでみてください。