巡礼都市レガーレ。
大聖堂と鐘楼がそびえる祈りの街の裏路地に、白い布を掲げた名もなき店がある。
人々はその店を『白布のブリジッタ』と呼んだ。
ブリジッタは、血の染み、祝福魔法の残滓、呪いの跡――
布に残る“人々の祈りと痛み”を見極めて洗い落とす、特別な技を持つ洗濯屋。
しかし彼女は女性であるという理不尽な理由で師匠の店を継げず、職人組合から外され、裏路地でひっそりと店を構えている。
そんな彼女の元に、南区の施療院で人々を癒すクレリック、テオドール・ベネデッティが血まみれの法衣を持ち込む。
「表通りの職人さんが、こちらにと」
差し出された紙に記された字は、確かに兄弟子マルコのもの。
表通りの店を継いだはずの彼が、なぜ裏路地のブリジッタへ依頼を回したのか――
この小さな違和感が、物語の核心へと静かに繋がっていく。
祈りの街で、血と祝福と呪いを洗う洗濯屋。
布に刻まれた“人の物語”を読み解くように、ブリジッタは今日も白布を風に揺らす。
静謐でありながら力強い、祈りと職人の矜持が交差するファンタジー。