第一話の冒頭、『私に髪はない。故に、神はいない。』という軽妙な自虐の駄洒落に、思わずクスリとさせられる。病を患う主人公の、どこか冷めていて、だけどユーモアを忘れない語り口に、私たちは油断しながら引き込まれていく。
「この子は死んでしまうのだろうか」と、読み手はあらかじめ切ない悲劇を覚悟して読み進めるはずだ。だが、この作品の真の恐ろしさはそこにはない。
読み進めるうちに漂い始める奇妙な違和感。世界を「客席の片隅から劇を眺める」ように冷めて見つめる主人公の哲学や、「駄洒落」という言葉の本当の意味に気づいた時、物語は単なる闘病記の枠を完全に踏み外す。
そして結末の、あの一行。
読み終えた瞬間、読者である自分自身がどこに立たされているのかが分からなくなり、ゾクりと背筋が凍りついた。
短い文字数の中に、あまりにも鮮やかな仕掛けが仕込まれた傑作。ぜひ、この衝撃に巻き込まれてほしい。
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