北村薫の短編に、和菓子の「黄身しぐれ」をきっかけに俳句をめぐる謎が展開していく「しりとり」という作品があります。
私はあの作品の、小説と俳句という異なる形式を自然に接合していくところが好きなのですが、この作品群にも、それとはまた違った意味で、短歌を軸にしながらエッセイや小説に近いものを接合しようとする面白さを感じました。
ある出来事や知識を説明する文章と短歌を組み合わせたり、短歌そのものに小さな物語を背負わせたり。その境界をいろいろ試しているように読めます。
そして個人的に重要だと思ったのが、短歌だけで成立している首もきちんと強いことです。
変わった形式を先に思いついて、そこへ短歌を当てはめたというより、着実に短歌を作れる人が「ここからさらに何ができるだろう」と、新しい技を開発しようとしている。その試行錯誤の痕跡を読んでいるような面白さがありました。
完成した首を読む楽しさと、短歌という形式そのものを使って遊び、実験しているところを見る楽しさ。その二つが同居している作品群だと思います。