第1話「029:23:59:59」の導入が見事だ。何気ない高校生の昼休みの会話から始まり、空に突如浮かぶ「030:00:00:00」という無機質な数字が、一秒ずつ確実に減っていく――その不気味さが淡々とした文体でじわじわと伝わってくる。政府も科学者も誰も説明できないまま、それでも学校や電車、コンビニといった日常が変わらず続いていくという対比が、逆にこの世界の異常さを際立たせている。凛と玲の何気ない会話のテンポの良さもあって、迫りくる終末というシリアスなテーマなのに、読み進めやすい。夜空に浮かぶ数字を見上げる場面の静けさが印象的で、残り30日で何が起こるのか、続きが気になる引きの強さを感じた。