心の奥深くに埋められない空白を抱える人って、どうしてこうも魅力的なんでしょうね。
大概のことは人よりも要領よく上手にこなすのに、常に心は冷えていて、他者に踏み込ませない人。
この物語の主人公・アレトは、まさにそういう男です。
彼は過去に唯一無二とも言える相棒を失っており、以来、独りきりのままで王国じゅうを旅しています。
本作は、アレトがとある村に到着してから立ち去るまでの出来事を描いたお話です。
見知らぬ村でのアレトの振る舞いは、実に堅実。
ド派手な戦いがあるわけでも、ヒロイックな活躍があるわけでもありません。
入り込みすぎない距離感で村人たちと接し、頼まれた仕事を丁寧にこなす。手慣れたやり方からは、彼がこれまで積んできた多くの経験が伺い知れます。
これが大変読ませるのです。村人たちの衣食住と、そこに間借りする根無草のスタンスと。
大事な核を失ったような人生だったとしても、生きるための器量さえあれば生きれてしまう。器用貧乏って、こういうことを言うのかも。
ただ、飯屋の息子であるカストンという青年との出会いが、アレトの心をほんの少し動かします。
前の相棒の喪失感を引きずり続ける彼にとっては、ささやかながらも重大な変化のはずです。
アレトがこの村を立ち去る時、何を得て、何を失っているのでしょうか。
ぜひ皆さまの目でお確かめください。