肉体を捨て、意識だけの高次元共同体「ユートピア」へと移行した新人類の語り手が、新しく加わった「君」へ向けて、何万年も前に地球で生きた最後の少女・シャルルの生涯を淡々と語りかけるSFミステリ・ファンタジーです。一見すると「人類滅亡の歴史」をなぞるディストピア小説でありながら、その本質は「すべてが数値化され、完璧に約束された思考の世界」に生きる者が抱く、肉体や偶然、そして『孤独』への強烈な憧憬と恐怖を描いた、非常に文学的で美しい一篇です。
シャルルという存在の曖昧さと、滅びゆく人類社会の空虚さが静かな語り口で描かれており、読後に深い余韻と不安が残りました。