第6話 2009年9月某日 変なジュースと平成ギャル


男子中学生とは、どの時代においても総じてバカな生き物である。先のことなんかこれっぽっちも考えず、今この瞬間を全力で無駄遣いして生きる。それが男子中学生だ。



例によって土曜日の午後、俺はヨーカドーのフードコートで谷本と駄弁っていた。今日は三波は何やら用事があるとかで不在だ。季節は9月も半ばに差し掛かったが、まだまだ残暑が厳しい。だからこそ、フードコートはエアコンが効いてて最高。


「俺が思うに、一番中毒性が高いのはルートビアだな。特にA&WじゃなくてDAD'Sの方」


「どっちも同じサロンパス味だろ……でも中毒性高いのはわかる」


「だろ?明らか初見殺しだが、2度、3度と飲んでるうちに癖になる。ドクペと似たようなもんさ」


俺と谷本は、さっきまで湘南台の方にある輸入食品店まで遠征していた。そこで買ってきた海外の炭酸飲料をフードコートの紙コップに注いで飲み比べているのだ。

ルートビアの味はなんというか……サロンパスみたいな感じ。谷本いわく、ネットでは「飲むサロンパス」と言われているとか。


「まあドクペは普通に美味いしな。だけどインカコーラ……こいつはダメだ。好きになれる気がしねえ」


「激しく同意だ紺野……ペルー人の味覚はわからん。メッコールの方がマシだな」


などと、不毛で無益な議論を真剣に繰り広げていると、隣のテーブルに騒がしいグループがやってきた。


「紺野と谷本じゃん!よっ!」


……2年5組のトップギャル・木村明菜と二宮詩織の御一行である。

相変わらず派手な巻き髪の木村は、やたらと袖が短いピチピチのTシャツを着ており、ただでさえデカい胸がさらに強調されている。端的に言ってエロい。二宮も似たようなピチピチTシャツを着てるけど、華奢な彼女が横に並ぶと、木村の破壊力が倍増するな。

で、木村と二宮だけなら百歩譲ってまだいい。問題なのは顔しか知らないギャルが2人もいることだ。


「よぉ……」


なんでわざわざ隣のテーブルに来るかねぇ……。気まずいったらねえんだけど。案の定、谷本はさっきまでの熱弁が嘘みたいに静かになってしまった。


「ねー、何してんの?」


さっそく木村が話しかけてきた。


「ん……海外の炭酸飲料の飲み比べ的な」


と言っても理解できまい。しかし、木村たちギャルは好奇心旺盛らしい。


「なにこれ、見たことないんだけど!」


「え、これ美味いの?」


「どこで売ってんのこれ?」


ギャルたちが口々に質問してくるが、圧が強いっ!おい谷本、なんか喋れよ。主催はお前だろ!


「えーとだな……これはルートビアっつて、アメリカで人気のある炭酸。癖が強いけど慣れると美味い」


黙ってしまった谷本の代わりに説明する俺氏。何やってんだろ。


「へ~。一口もらっていい?」


「ん?ああ」


木村はその場にあった紙コップを手に取ると、谷本一押しのDAD'Sルートビアを注いで一息に飲み干した。

案の定、木村は整った顔を歪めて「うえ~……ナニコレ!?」とドン引きである。


「ヤバいこれ。湿布みたいな味するんだけど。ニノも飲んでみ?」


顔を歪めた木村がコップを二宮に渡すと、彼女も同じように飲み干し、「ぐあ~……ナニコレ!?」と同じ反応をした。残るギャル2人も同様だった。


「……他のも同じ感じ?」


「大体は……ルートビアはマシな方」


「エグいことしてんね~」


「あっ、きむ~!エリカ着いたって」


「おっ、じゃあ行くべ!またね2人とも。ごち!」


木村たちは、誰かとの待ち合わせで時間を潰しに来ただけだったらしい。御一行は嵐のように去って行った。


……間接キスまみれの紙コップを残して。


「大変だ紺野……俺、ギャル4人と間接キスしちまったぞ。これ実質ハーレムだろ」


「お前ずっと黙ってんじゃねえよ。クソ気まずかったからな!?」


こんなことをしているうちに、貴重な中学時代の、二度と戻らない土曜日の午後はあっという間に過ぎていった。


自分でも、男子中学生って本当にバカな生き物だと思うよ。あと木村の私服がエロかった。



■お礼と宣伝■

お読みいただきありがとうございます!

本作は同じくカクヨムにて連載している青春小説『Since1995─ガラケー時代に青春してた俺と澤村春花の話』のスピンオフSSになります。

このSSをご覧になってみて、アホ男子と平成ギャルが本編で何をしているのか気になる!という方は以下のリンクより是非チェックしてみてください!

https://kakuyomu.jp/works/822139842823015643

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