誰もがよく知る昔話「浦島太郎」。本作は、太郎が玉手箱を開けるあの結末から始まり、そこに至るまで「何があったのか」を遡っていく、ミステリー仕立てのダークファンタジーです。
ノーラン作品を思わせる、時間軸を反転させた構成の妙が光ります。すべてを知ったあとでは、悲劇の象徴だったはずの玉手箱が、ひとつの救済へと意味を変える。その鮮やかな反転と、誰もが知る昔話の裏側に、歌われなかった物語を立ち上げる発想が魅力です。
短い作品ですが、一話ごとに潮騒のような儚さが積み重なり、やがて、静かな悲劇へと収斂するクライマックスを迎えます。読み終えたあとにも深い余韻を残す作品です。