最初は、かなり勢いのある恨み節だと思いました。
「ゾーン」と呼ばれる以前から、自分の中にあった感覚。
それを虚言と呼ばれた悔しさや怒りが、古風な言葉遣いと現代的な単語の混ざり合いで表現されていて、とても印象に残りました。
形としては短歌の形式をとっているのに、そこに缶の黒金やモンエナといった現代的な言葉が入り込んでくるところが面白かったです。
古典的な響きと令和の感覚がぶつかり合っていて、黒崎凱様の「令和最新版歌人」という名乗りにも納得してしまいました。
けれど、読み進めるほどに、ただ怒りをぶつけるだけの連作ではないのだと感じました。
「呼ばぬあなたを おもいけるかな」から、空気が少し変わります。
自分の感覚を嘘だと決めつけない誰かへの思い。
そして、君の神域を虚言とせず、白を守ろうとする姿勢。
そこに、傷つけられた側の痛みだけでなく、誰かの大切なものを否定しない優しさが見えました。
最後の二首もとても好きです。
悪意の毒から離れ、善意の星のために進んでいく。
怒りから始まったはずの歌が、最後には愛を紡ごうとするところに、この連作の美しさがあると思いました。
短い中に、悔しさ、皮肉、ユーモア、そして祈りのような優しさまで込められた作品でした。