鏡から徹底的に逃げ続ける竜志の孤独な旅路が、移動中の匂いや音といった丁寧な描写によって、非常に臨場感たっぷりに描かれています。誰もいないはずの廃屋のような実家、消えたアルバム、そしてゴミ箱に残された不穏な新聞記事。
提示された「20年前の未解決事件」の影が、主人公の失われた記憶とパズルのように噛み合い始める、極上のミステリーホラーです。
新幹線で「窓側を避けて通路側に座る」という竜志ならではの徹底した行動原理に説得力があります。
隣の女性が食べる駅弁の香ばしい匂いや、ローカル線に乗り換えるにつれて静まり返る景色の移り変わりなど、読者も一緒に旅をしているかのようなリアルな空気感が素晴らしいです。