寂寥とした空気を纏った文体と、それを支える確かな表現力が魅力的な歴史短編です。
古風な語り口が単なる雰囲気づくりに留まらず、室町という時代や仏教観と見事に噛み合っていて、読み進めるほど世界へ引き込まれました。
とりわけ侍の内心の描写が素晴らしいです。
刀という魂を手放せない矛盾と葛藤、しかしながらそれも困窮ゆえに手入れすらおろそかになっていっている様子など一つ一つの描写に文学的な味わいがあり、とても好みでした。
非常に密度の高い文章でありながら読後感は重すぎることはありません。
ただ語彙が豊富というだけでなく、リズムがいいからでしょうか。
安易な奇跡や救済といった答えを提示することのない締め方も、とても好きです。
たしかな一編の文学作品を読んだという満足感があります。
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