第一章の抑制された筆致が良い。
父の死から四十二日、葬儀も納骨も遺産整理も終わり「ようやく静かになった」と思った矢先に届く「電子人格継承手続開始通知」。この設定が淡々とした文章で提示される分、じわじわと不穏さが染み込んでくる。
叔父の存在が特に印象的だ。ECHOについて「興味がない」「俺なら消す」と言い切る一方で、「返事が返ってくると、本人だと思いたくなる」「あれは弟じゃない」と語る言葉に、電子人格という技術に対する複雑な拒絶と葛藤が滲む。派手な感情表現を避けながらも、喪失と技術の間で人がどう向き合うかという重いテーマを丁寧にすくい上げている。
そして最後に明かされる「継承希望者、登録人数二名」の一文。主人公の知らない誰かが父のECHOを求めている——この引きで続きが気になって仕方ない。派手さはないが、静かに深く考えさせられる近未来SFだ。