何百回も繰り返した夏の一日。けれど今回は、ガチャの推しが一回で出た。ループの「ずれ」を、事件ではなくこんなささやかな出来事で示す導入がまず巧いと思いました。
アイスティーの氷がカランと鳴る音、ストローを回す仕草、湯上がりのアイス。物語の手がかりは、どれも日常の小さな手触りの中に置かれています。
だからこそ、それに気づけるかどうかが読者に委ねられる。ウサギに似ているのに妙に可愛げのない物言いをするアルムが、その緊張をうまくほぐしてくれます。
幼馴染への言えない気持ちと、「最期」という言葉の重さ。
その二つが静かに並走する、余白の多い青春SFファンタジーです。読み終えたら、もう一度最初の夏に戻りたくなるはず。
本作は、何度も繰り返されてきた「終わらない夏」の終わりが急に突きつけられることで、それまでの安心感が一転し、切なさと静かな焦燥感を伴ったノスタルジーに引き込まれる一作となっております。
WEB小説のトレンドに合わせて、描写は最適化されている中で、冷たいアイスティーの音や夏の情景が非常にリアルに描かれており、空間の演出が際立つ作風が魅力的です。
そして、いつもと変わらないはずの日常に紛れ込むわずかな違和感や、「最期」を予感させる心理描写の巧みさが、作者様の手腕だと感じます。
さらに、作者様自身が仰っているように、本作は、プロットよりも感性を優先した構造となっており、より心理や情景描写に作者様の内面世界がダイレクトに表れているものと思いました。
冷たいアイスティーの音とともに繰り返される終わらない夏の中で、不意に訪れる「最期」の予感と幼馴染への想いを瑞々しく描いた、切なくも美しい青春タイムリープファンタジー。
派手な展開よりも、物語全体の空気感を味わうことがお好きな読者様は、是非一度お読みいただければと思います。
【レビューコンテスト応募】