茶碗蒸しの味の話ではありません。ミステリーの話です。
ざっくり事件編と解決編という超絶シンプル二部構成で、するりと読めてしまう、ひとくちミステリー。自殺した料理長に毒を盛られた六人が、解毒剤でなんとか助かろうと『誰が毒を口にしたか?』を推理し合う密室劇です。
なんだか、ミステリーと料理は似ているなとつくづく思います。高級食材を使うのも良いですが、一振りのちょっとした隠し味にこそ、うまさの秘訣が宿っていたりしますので。
ここまで、レビューを読んでいただいた奇特なアナタ。『毒を喰らわば、皿まで』です。どうぞ、このまま本編へお進みください。
砂糖と塩を間違えたような衝撃が待っています。
「孤島」「毒」「六人の探偵」「六つの空の茶碗蒸し」。
ミステリーらしい緊張感のある要素が並んでいるのに、中心にあるのが“茶碗蒸し”というところで、まず心をつかまれました。
しかも、その茶碗蒸しがただの変わった小道具ではなく、具材、食べた順番、毒の混ぜ方など、推理の材料としてしっかり機能しているのが面白かったです。
探偵たちが次々に考えを出していく場面はテンポがよく、読者であるこちらも自然と「誰が毒を盛られたのか」を考えてしまいます。
けれど読み終わってみると、ただ答えを探していたつもりが、いつの間にか作品の仕掛けの中に入り込んでいたような感覚がありました。
短い二話の中で、題材の面白さ、会話のテンポ、推理の楽しさ、そして最後に視点が変わる鮮やかさまで味わえる作品でした。