美少女ネクロマンサーVtuber、ララリ・ル・レロー。
リスナーと軽口を交わし、失敗した卵焼きを笑われ、届いた投げ銭へ明るく礼を言う。
どこにでもありそうな、楽しく穏やかな朝の雑談配信です。
けれど、一人の視聴者から高額な投げ銭が届いた瞬間、その空気が静かに変わり始めます。
添えられているのは、意味の分からない短い言葉。
初めは少し変わった視聴者か、悪質な荒らしにも見えました。
しかし、投げ銭が繰り返されるたびに金額は跳ね上がり、配信へノイズが混ざり、画面の向こうで説明のつかない異変が起こり始めます。
戸惑いながらもコメントを続けるリスナーたち。
状況を理解できないまま、明るい雑談配信が壊れていく様子を見守ることしかできない読者。
この作品は、ライブ配信という見慣れた日常を、その形式のまま逃げ場のない怪談へ変えてしまいます。
画面の向こう側で何が起きても、自分は安全な場所から見ているだけ。
本来なら、そう思えるはずでした。
けれど、短い言葉、崩れていく音、流れ続けるコメントが重なるほど、画面一枚を隔てた距離さえ信用できなくなっていきます。
さらに不気味なのは、異変を起こしているものが怪異なのか、悪意を持つ人間なのか、それとも誰かが軽い気持ちで試した何かなのか、最後まで断定できないことです。
誰かの楽しい配信が、見知らぬ誰かにとっては別の目的を果たすための場所だったのかもしれない。
投げ銭、コメント欄、切り抜き動画、匿名の書き込み。
見慣れたインターネットの風景だけで組み上げられた、現代だからこそ成立する恐怖に、指先まで冷たくなりました。
次に生配信を開いたとき、妙な高額投げ銭が表示されても、どうか軽い気持ちでその行方を追わないでください。
画面の向こうで始まったものが、画面の中だけで終わるとは限らないのですから。