以前から大好きだった作品なので、こちらでも改めてレビューを残させていただきます。
「ぢうる」という謎の食品をめぐる、ネット上の断片だけで構成されたモキュメンタリー作品です。
商品レビュー、質問サイト、SNSのやり取り、企業のお知らせ。
一つ一つは、どこかで見たことがあるような文章なのに、読み進めるほどに「これは本当に大丈夫なのか」と不安が膨らんでいきます。
私たちの日常生活とリンクしているからこそ、この恐怖がすぐ隣にあるかもしれないと思わせる没入感と臨場感がありました。
直接的に恐怖を説明しすぎないところが、とても効いています。
誰かが詳しく解説するのではなく、ぢうるを食べた人、欲しがる人、拒む人、巻き込まれていく人たちの反応や、ネット上に残された断片的な情報だけで、その異常さがじわじわ伝わってくる。
この見せ方がとても巧みで、気づけばこちらまで検索結果を眺めているような感覚になっていました。
しかも、怖いだけではありません。
どこか笑えてしまう軽さや、ネット文化の空気感もあり、その気軽さがあるからこそ、後半に進むほど不気味さが増していきます。
「おいしい」と「やばい」の境目が、少しずつ崩れていく感じがたまりません。
ぢうるとは何なのか。
なぜ人はそれを求めてしまうのか。
読み終えたあと、妙にその名前が頭に残ります。
そして少しだけ、検索してはいけないものを検索してしまったような気持ちになる一作でした。