「アンノウンを解き明かす。それがこのゼミの活動モットーなのだよ!」
謎をこよなく愛する、ちょっと――いえ、かなり風変わりな庵乃雲先生。
そんな先生とゼミ生たちが足を踏み入れたのは、地図上では無人島でありながら、人々が暮らしている未知の島・乙守島。
そこには、本土とはまったく異なる文化や風習、そして長い年月をかけて守られてきた“あるもの”がありました。
なんとも怪しく、不穏で、好奇心を刺激される謎ばかりです。
けれど、この物語の魅力は「怪異の正体を解き明かすこと」だけではありませんでした。
知れば知るほど、それまで当たり前だと思っていた景色が違って見えてくる。
正しいと思っていたこと。
守るべきだと信じていたもの。
長い年月をかけて受け継がれてきた文化や価値観。
それらを疑うことは、ときに怪異そのものより恐ろしく、そして苦しい。
それでも庵乃雲先生たちは、“わからない”から目を逸らしません。
先生だけがすべてを解決してしまうのではなく、千界、幹史、瀬名、竜也――それぞれが見つけた違和感や、それぞれにしか持てない優しさと視点が、少しずつ真実へ近づいていくところも、この作品の大きな魅力だと思います。
そして何より好きだったのは、登場人物たちを簡単に「正しい人」「間違った人」へ分けないところ。
人は弱くて、怖くて、間違える。
誰かを守りたいという気持ちさえ、時には思わぬ方向へ進んでしまう。
それでも、間違えたなら終わりではない。
立ち止まってもいい。
戻ってもいい。
もう一度、別の道を探したっていい。
コミカルな掛け合いに何度も笑わされながら、気がつけば「信じること」「知ること」「生きること」にまで思いを巡らせていました。
怪奇譚であり、ミステリーであり、そして人がもう一度未来へ歩き出す物語。
ぜひ、庵乃雲ゼミの一員になったような気持ちで、この“アンノウン”を最後まで見届けてみてください。
きっと読み終えた頃には、最初に見えていた景色とは少し違うものが見えているはずです。