一気読みしてしまいました。
するつもりなかったのに!!ゆっくりじっくり読むつもりだったのに!!
こほん、失礼。取り乱しました。
本作は金木犀の香りや彼岸花の着物の女、のような怪異をキーに次々と変死を遂げていくタイプのホラー作品です。
情景描写、心理描写、散りばめられたさりげなき伏線と、伏線を拾う絶妙なタイミング……すべてにおいてよく作り込まれていて、とにかく圧倒されます。
怪異系のホラーと言えばまず、怪異の描写が重要でしょう。
しっっっかり怖いです。いや、とにかく怖いです。
とつぜん出てくる彼岸花の着物の女は、物語の人物だけでなく読者の度肝を抜き、着物の女の不気味なしぐさも相まって、恐怖で血の気を引かせる。
狂気に飲み込まれていく人たちの狂いざまはそれ以上で、猟奇的な描写のおぞましさに、「映像じゃなくてよかった」と変な汗をかきます。……いや、作者様の筆力の高さゆえにけっこうゾワゾワッと鳥肌が立ちました。だってあれで、あれを削るんだぜ(あれが何なのかについては、ぜひご自分の目でご確認ください)。
それだけではありません。
この怪異以上に際立って読者を恐怖させるのが、人の醜い感情です。
ふつふつと沸き起こる猟奇的な心理。その心理描写が読者の目を離しません。
狂った人物の思考が読者に侵入してくる。人物と同じものを見て、聞いて、じわじわと恐ろしい思考に飲み込まれていく。そんな感覚に囚われます。筆力の高さゆえでしょう。恐ろしい……この作品自体が怪異です。特級呪物です。(こら)
本作はミステリーとしての側面も持ち、
散りばめられた伏線は、ホラーの描写の主張力ゆえに見逃し、後になって「うわ、まさかの!?」となります。最終話までしっかり、驚かされました。
ただ、これは伏線系のミステリーに共通して言えることですが、一話一話別日に読んでると、伏線があったこと自体忘れてしまうので、一気読みするほうがもっと楽しめるかもです。紙本と違って戻りづらいので。
というわけで、未読の方はぜひがっつり読書時間を確保したうえで、読んでみてください。
もしかしたら本作の魅力に、狂気に取り憑かれて、一気読みするつもりでなくても一気読みしてしまうかもしれませんが……。繰り返してしまいますが、これはもう特級呪物です。(こら)
お勧めです。
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何と言っても、登場する『呪い』のタチの悪さが圧倒的でした。
ここまで執拗に対象者を苦しめ続け、絶望に追い込むという。どうやったら憎い相手を徹底して痛めつけられるか。その方法としての「この呪い」が生み出されるという発想が本当に凄かったです。
本作は「山下智寿」、「山田和真」、「桐島凛」、「宮下直樹」、「類家栞」の五人それぞれの物語を通し、不可解にして凄惨な呪の実態が描かれていくことになります。
その呪いに関わった人間は、『金木犀の香り』を嗅ぎ、更には『奇妙な着物の女』の姿を目にするという。
そしてその二つのキーワードが揃った時、間もなく対象者は凄惨な末路を向かることになる。
個々の人物のエピソードはどれもディテールに富んでいて、それぞれがどんな想いを持って日々を生き、必死に何かを得ようとしていることなどが伝わってきます。彼らの葛藤も、彼らが触れている世界の空気さえもが読者は鮮明に想像することが出来ます。だからこそ、彼らに待ち受ける破滅や絶望が強烈に心に迫って来る。
そんな救いのない境遇に置かれる五人と共に、並行して描かれる『奥島壱花』という一人の女性の物語。そしてひそかに世の中の裏で起こっている一個の未解決事件。
「この呪いの正体は一体なんなのか?」、「タイトルにある『シーシュポスの花』とはどんな意味なのか」など、破滅の物語を読んでいく中で疑問が浮かぶ。
シーシュポスと言えば、神の怒りを買ったことで「山の上へと向かって岩を運び続けねばならない」という罰を受ける逸話を意味している。そんな「徒労」や「無間地獄」のような神話を負ったタイトルは、作中の怪異とどう絡んでくるのか。
終盤で明かされるタイトルの意味。そして怪異との関連付け。それが判明した時に、「なんという意地悪な」と戦慄せずにいられませんか。
本当によくぞここまで徹底した苦痛と絶望のシステムを考案したものだと、怪異の中枢たる存在の「憎しみの深さ」などが自然と伝わって来ることになりました。
とにかく全体の完成度が高く、科学的な考証も緻密。そんな練り込まれたプロットに、毎日続きが気になって仕方なくなりました。
怖いのだけれど、答えを知りたい。そして、一人一人の人物がどんな末路を迎えてしまうのか見届けずにいられない。
そんな「恐怖」への渇望を強く刺激してくれる、最上のホラー小説です。
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