第一話「Day1 ── フォローされた」

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2026年 6月29日 21:03

凪のノートより

──────────────────



スマホを見るのが、少し怖かった。


昨夜、あのスレッドを見つけた。

試しに検索したら、通知が来た。

それだけのことだ。

よくある都市伝説の一つ。

作り話に決まっている。


そう思いながら、朝から何度もスマホを確認している。


通知履歴をさかのぼると、やっぱりあった。



┌──────────────────────┐

 通知履歴    

     

@unknown_3am があなたを

フォローしました  

     

2026/06/14 03:00  

└──────────────────────┘



2週間前の、深夜3時ちょうど。

私がぐっすり眠っていた時間に——このアカウントは、私を見つけていた。


気持ち悪い。

でも、気になる。


都市伝説オタクの悪い癖だと、自分でもわかっている。


アカウントのページを開いた。



┌──────────────────────┐

@unknown_3am  

     

アイコン:[真っ黒]  

プロフィール:(空白)

フォロワー:0   

フォロー中:1   

     

投稿 4件    

└──────────────────────┘



指が、止まった。


昨夜確認した時は、確かに3件だった。

でも今は4件。

つまり——昨夜、私が検索した後に。

深夜に、新しい投稿があった。


ゆっくりと、4枚目の写真を開いた。



┌──────────────────────┐

@unknown_3am  

     

[写真]     

暗闇の中に、窓。  

窓の外は夜。   

カーテンが少し、開いている。

     

投稿日時:2026/06/28 03:00

└──────────────────────┘



昨夜の、深夜3時。

私がスレッドを読んでいた2時間後に——この写真が投稿された。


窓の写真。

暗闇の窓。


カーテンの隙間に、何かがいるような気がした。

でも暗すぎてわからない。

目を凝らせば凝らすほど、何かがいる気がしてくる。


気のせいだ。

……そう思いたかった。


スマホをポケットに押し込んで、学校に行った。



授業中も、ずっと気になっていた。


窓の写真。

カーテンの隙間。


あれは何だったんだろう。


45分の授業が、ひどく長く感じた。


放課後、ひよりに話した。

森下ひよりは私の幼馴染で、一番の親友だ。

都市伝説の話をすると毎回「また始まった」という顔をする。


「ねえ、@unknown_3amって知ってる?」


ひよりは眉をひそめた。


「何それ。またオカルト系?」


「フォロワー0なのに私だけフォローしてくるんだよ。掲示板に書き込みがあって——」


「凪、それ普通に怖い話系の作り話じゃないの」


バッサリと切られた。


「でもさ、私のアカウントに実際に通知が——」


「ストップ」


ひよりが私の手を掴んだ。

少し、強い力で。


「凪、またそういうの深追いして眠れなくなるやつでしょ。去年の学校の七不思議の時みたいに」


——去年の夏、私は一週間ほど眠れなくなった。

自分で調べておいて、自分で怖くなる。

それが私のいつものパターンだと、ひよりはよくわかっている。


「今回は違うって。本当に通知が——」


「じゃあ見せて」


スマホを渡した。

ひよりは画面を見て、少し黙った。


「……フォロー通知、確かにあるね」


「でしょ」


「でもこれ、フォロワー集めの業者とかじゃないの。0フォロワーで1人だけフォローするの、怪しいアカウントがよくやる手口だよ」


言われてみれば、そうかもしれない。

でも——


「投稿が気になるんだよね。写真だけで、文章が何もないの。しかも深夜3時にしか投稿しないし」


「それも業者とか海外の人がよくやる時間帯だって聞いたことある」


ひよりは私にスマホを返しながら言った。

その時、一瞬だけ——ひよりの目が、泳いだように見えた。


「深追いしないほうがいいよ、凪。ほんとに」


何か言いたそうな顔だった。

でも私は、気づかなかった。

その時は。



夜、ベッドの中で残りの3枚の写真を見返した。


1枚目。

暗闇の中に、古いブランコ。

公園のような場所。

ブランコが少し揺れているように見えるのは、きっと写真のブレだ。

でも——風がないのに、なぜ揺れているんだろう。


2枚目。

廊下のような場所。

学校か、病院か、どこかの施設。

蛍光灯が一本だけついていて、奥が暗い。

その暗闇の中に——何かが立っているような気がする。

目を細めても、はっきりしない。


3枚目。

夜の川。

川面が光を反射してぼんやり光っている。

岸に——何かが落ちている。

人の形をした、何かが。


全部、暗くてよく見えない写真だ。

全部、何かがいるような場所の写真だ。

全部、深夜3時に撮られた写真だ。


気のせいかもしれない。

全部、気のせいかもしれない。


でも——


もし気のせいじゃなかったら。


スマホを伏せて、目をつぶった。


眠れなかった。


天井を見つめながら、ぼんやりと考えた。


このアカウントは、何者なんだろう。

誰が運営していて、何が目的で、なぜ私だけをフォローしたんだろう。

掲示板の書き込みには「フォローされた時点でもう終わっていた」とあった。

でも、何が終わっているというんだろう。


考えても、考えても、わからなかった。


時計を見た。

午前2時58分。


もうすぐ、深夜3時。


——このアカウントが動く時間。


まさか、今夜も投稿があるんだろうか。


スマホを手に取った。

画面をオンにした。


通知はなかった。

ほっとした。


スマホを置こうとした、その瞬間。


振動した。



┌──────────────────────┐

 通知     

     

@unknown_3am が新しい写真を

投稿しました   

     

2026/06/29 03:00  

└──────────────────────┘



今夜も、深夜3時ちょうど。

また、投稿があった。


震える手で写真を開いた。



┌───────────────────────┐

@unknown_3am    

     

[写真]       

暗闇の中に、家。    

住宅地のような場所。  

二階の窓に、明かりがついている。

カーテンが閉まっている。  

      

投稿日時:2026/06/29 03:00

└───────────────────────┘



どこかの家の写真。

二階の窓。

明かりがついている。


深夜3時に明かりがついている部屋。


私は今、ベッドの中でスマホを見ている。


——深夜3時に。


——二階の自分の部屋で。


写真の隅に、小さく何かが書かれていることに気づいた。

目を細めてスマホを近づけた。


読めた。


「みつけた」


背後で。

カーテンが、ゆっくり揺れた。



──────────────────

現在時刻 2026/06/29 21:00

次の投稿まで あと24時間

深夜3時まで あと6時間

スマホの通知を 切ることをお勧めします

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毎日21:00更新

次回「Day2」

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