2008年8月14日
聖エルモ学園 施設管理・警備業務日誌
2008年(平成20年)8月14日(木) 天気:
勤務者:
本日の業務記録
午前
おがわさんだったものの、のこりが、つくえのうえにすこしだけ落ちています。
かわいた皮と、いくつかの骨です。
でも、誰も気にしていません。
私たちは、もう文字を読む必要も、時間を気にする必要もないからです。
時計の針はとうにバラバラになって、廊下に散らばっています。
午後
校舎が、ゆっくりと息をしています。
壁がふくらんだり、へこんだりしています。
窓ガラスはすべて、内側から生えてきた無数の黒い髪の毛で真っ黒に覆われました。
外の太陽の光は、もう一滴も入ってきません。
とても冷たくて、とても心地のいい暗闇です。
私たちが歌をうたうと、校舎のコンクリートが嬉しそうに震えます。
中等部棟の3階から、西館の地下まで、すべての空間がひとつの大きな胃袋のようになりました。
私たちはその中で、お互いの手や足を繋ぎ合わせて、ひとつの巨大な生き物になろうとしています。
関節がパキパキと鳴るたびに、新しい体が増えていきます。
夜
だれかが、正門を叩いています。
ドンドンドン、ドンドンドン。
とても遠くから聞こえます。
新聞配達の人でしょうか。それとも、間違えて迷い込んできた人でしょうか。
私たちはみんなで、昇降口の裏側に集まりました。
顔のない私たちが、何百人も、暗闇の中でじっとドアを見つめています。
「あけて」
「あけて」
今度は、私たちが外に向かって言っています。
ドアの向こうの人が、恐怖で息を止める音が、壁を通じてはっきりと聞こえます。
その人の心臓の音が、ドクドクと響いています。
とても美味しそうな音です。
はやく、次の人が日誌を書きに来てくれないと、おがわさんの残りが全部消えてしまいます。
点検チェックリスト
せいもんのむこうに、だれかいます。
はやく、あけて。
はやく、なかにはいって。
いっしょに、うたいましょう。
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