と或る地方で怪談を収集している時に世話に
なった旅館の主と、偶然にも都会の喫茶店で
再開した ホラー小説家 の男。
嘗て聞いた話の他にも何か 怖い話 は
ないかと尋ねたのだが。
相好を崩しつつ とっておきの 話を
聞かせる旅館の主。その鄙びた訛りのある
語りに引き寄せられては
薄闇の中へと吸い込まれてしまう。
とにかく、巧い。
こんな怪談掌編を令和の世に目にする事が
出来るとは。昭和の錚々たる怪奇作家も
瞠目するほどの怪談だ。
因果応報と、その理の外にある 何か を
一つに纏めて丸めて火を放つ。
鮮烈なものではない。また、陰火の如く
茫洋としたものでもない。
只々、黑ぐろとした業火を視るだろう。
構成は勿論のこと、細やかな部分にも
決して手を抜かない作者のセンスと粋には
思わず、目を見張る。
ラストの場面。ガラス張りのビルに映った
巨大な夕陽の不穏さに
この作品の非凡さを想わずにはいられない。