なにも起きない物語だと、作者様はおっしゃいます。
言葉に偽りはなく
物語の舞台は英雄譚のエピローグ。
勇者はいる。
活躍は語り継がれ、人々を興奮させている。
英雄が取り戻したあとの平和に
これからも生きる人々がいて。
その平和の中には、勇者もいる。
戦いが日常だった彼が
何気ない本物の「日常」へ溶けていく。
そんな風景を「異質」と眺める人。
いつの間にか「当たり前」に受け止めている人。
勇者はその違いを嗅ぎ分けている。
そして、後者の匂いがする方へ何度も足を運ぶのだ。
そして、帰る場所を得ていく。
それだけ、と言ってしまうには惜しい。
とても静かで、劇的な日常。
優しく、暖かく。巧みで、美しい筆致で編まれていく日常。
極上の価値がある静けさである。
この物語に出会えた幸運を抱いて、
ただそっと、幸せなため息をつくのでした。