バレリーナは高く上がる足が素晴らしいのではなく、舞台に出てきて幕が下りるまで、どの瞬間のどの部位をとっても美しいことが奇跡だと思っています。右手の薬指だとか、左手の二の腕だとか、うなじだとか。
志重文吾さまがしぇもんごさまだった前世の著作集であるこの作品は、どこを取り出しても、読むものを「ぐぬぬ」とうならせるセンスと隙のなさがあるように私には思えます。読み手が試されてるって感じ?
小高い丘の上だったり、砂浜だったり、あるいは中学校の屋上などで、いっさい緊張感を切らすことなく、みごとなステップを踏んでいるような作品ぞろいです。
もしかすると、砂浜でワルツはないだろうと首を傾げるかたがいらっしゃるかもしれません。そこは、好みがありますから。でも、サンバを浅草で踊ってもいいし、よさこいを北海道で踊ってもいいのです。
おじさんに始まり Dang-Kong に終わるこの一連の短編群は、今は亡きしぇもんごさまのチン魂歌であり、ひそやかな産声でもあります。