1995文字・全1話。この制約の中で、竹藤戸茉緒さんは「好きな人の名前を呼ばれる瞬間の嬉しさ」「ふざけ合いながら積み上げてきた時間」「言葉にしなくても分かってた、でも言葉にしてほしかった」そのすべてを、過不足なく書き切っています。
この作品の巧みさは「見せ方の解像度」にあります。青山の特徴として「刈り上げた襟足」と「ぴょんと跳ねた後頭部の髪」という二つのディテールを繰り返し使うことで、佐野の目線が彼のどこに向いているかが自然と伝わります。好きな人を遠くから見つめるとき、人は全体ではなく、その人だけの小さなパーツを覚えているその感覚が的確に表現されています。
「チョコを食べると恋愛しているときと同じ脳の状態になる」という青山の告白の切り出し方も秀逸です。直接「好き」と言う前の、ちょっと遠回りな言葉の選び方に、告白する直前の男の子の緊張と計算が滲んでいて微笑ましい。そしてその後の「はぁぁ〜」という大きな息と、その場にしゃがみ込む仕草この「肩の力が抜ける瞬間」の描写が、作品全体の中で最も胸に刺さります。
軽口のテンポも心地よい。「チョコばっか食べてる人に言われたくないですぅ〜」「誰かサンと違って、僕はちゃんと部活やってますぅ〜」この間の良さが、二人が積み上げてきた時間の長さを説明なしで読者に伝えています。
「トワイライトチョコバーガー記念日でどう?」という最後の一行が、この作品のタイトルと繋がって綺麗に着地します。甘党と辛党、でもその日の二人にはどちらの味も混ざっていたそういうことですよね。
「短くリズムが良く、言葉の紡ぎ方が素敵な文章を目指している」という作者のプロフィールの言葉通り、この作品はその目標に真っ直ぐ届いています。次回作も楽しみです。