寺の娘の寺来薙心(じらい なこ)は、中学二年生。
名が示すとおり見た目は地雷系ファッションだが、根は真面目で、お寺の教えを大切にしている少女です。
クラスメイトに「地雷な子」とからかわれ、怒るたびにケツバットで制裁してしまうところにグッと惹かれました。
ケツバットーー
この時代においてはなかなか耳にしなくなったワードですが、本作では独特の魅力を放っています。
コンプラ時代に一石を投じるかのような攻めの笑いが爽快で、どこを開いてもクスッとなれます。
飛び抜けた笑いだけでなく、そんな彼女には、教会の息子である銀髪の美少年、桂木京魔へ想いを寄せる恋愛要素もあるのですから、面白くならないはずがない。
ネーミングセンスの素晴らしさはもちろんのこと、恋の成就におけるタイムリミットなど構成も抜群です。
さらには薙心の心理を掘り下げる深みのある描写に出会うこともあり、様々な楽しみ方ができる本作。
ケツバットをされない程度に、引き続き楽しませていただきたいと思います。
笑っていたはずなのに、いつの間にか恋の行方を応援していました。
タイトルや冒頭の勢いから、ハイテンポなギャグ作品だと思って読み始めました。
けれど、読み進めるほどに印象が変わります。
怒ればケツバット、語れば仏教用語という強烈な個性を持つ寺来薙心。しかし、その内側にある恋心は驚くほど真っ直ぐで、不器用で、年相応の女の子そのものです。
背後霊の環さんとの軽快な掛け合いには何度も笑わされる一方で、好きな人の何気ない出来事に一喜一憂し、暴走して、落ち込んで、それでも恋を諦めない姿には思わず胸を打たれました。
ギャグだけで終わらせず、恋愛としても読者の心を動かしてくれる作品です。
笑えるのに切ない。その絶妙なバランスがとても心地よく、気づけば薙心の恋を心から応援していました。
彼女がいつか想いを届け、愛する人と手を繋げるその日まで、最後まで読み続けたい作品です。
まさかの「お寺」!
本作は、「地雷系女子」と見せかけて実は「寺の娘」という全力の勘違いタイトルの衝撃から、さらに冒頭より繰り出される「お寺」の知識に圧倒される一作です。
知らない。
日本に住んでいて、身近なはずの「お寺」ですが、知らない言葉と知識が、これでもかと叩きつけられます。
まさにケツバットの如く。
最大のフックはここでしょう。
しかし、本作の真骨頂は「主人公・薙心のあまりのピュアさと一途さ」だと感じました。
そう、「お寺知識」で目がくらみそうな中、本作は丁寧にラブコメを描いているのです。
お寺という少し特殊な実家の環境や家族とのコミカルな日常が、甘酸っぱい青春ラブコメに程よいアクセントが、作品の持ち味です。
そして、コメディに関しては、瞬発力が高く、シリアスになりすぎない軽快な筆致で、読者を飽きさせずに一気読みさせる可読性の高さを備えています。
「地雷系」と誤解されがちな実家がお寺の純情少女・薙心が、3年越しの片想いを実らせるために奮闘する、笑いと健気な胸キュンが詰まった一途系ドタバタ青春ラブコメ。
これは、玉石混交のカクヨムの中で、際立った一作です。
まずは、なんだろう?と思って触れてみてください。
そして、その劇薬と王道に酔いしれていただければと思います。
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