地上げ。90年代に日本各地で大変社会問題になった行為である。新しい建物を建てる為には、建設予定地にある物件を何とか立ち退かせなければいけない。これ自体は社会にとって絶対に必要だし、悪でも何でもない。だがそこで、問題は起こったのだ。とんでもなくアコギで強引な方法で立ち退かせようとしたヤツが大量発生したのだ。そういう人らは地上げ屋と呼ばれ忌み嫌われたという。もっとも、それ以上にたくさんの真っ当な交渉をする人はいたことも事実だろう。
そんな地上げを、本作はまさかの異世界で行うのである。前世は一流不動産企業のサラリーマンが、王都再開発の為にとある宿屋と交渉に臨む。穏便に終わらせたい主人公、受け入れようとする看板娘。だが、その宿屋は……なんと勇者御用達の凄い物件だった……
異世界転生ものなのに、剣でも魔法でもなく「用地収用係」から始まるところが、まずとても面白いです。
主人公ジンの前職が地上げ案件に関わる人物で、その知識と交渉力が異世界で武器になっていく予感があり、第一話から一気に引き込まれました。
王都、勇者、エルフ、オーク、宿屋。
いかにもファンタジーらしい要素が並んでいるのに、そこへ「謄本」「権利関係」「買収」「再開発」といった現実的な言葉が入ってくる。その組み合わせが絶妙で、読んでいて思わず笑ってしまいます。
特に魅力的なのは、相手がただの敵ではないところです。
勇者が代々泊まってきた宿屋、長く生きる種族、複雑な相続関係を抱えた地主。力で倒せば終わり、という相手ではなく、それぞれに歴史や事情がありそうで、「この交渉、どうやってまとめるんだろう」と続きが気になります。
ジンの軽さと実務能力、マーロとの掛け合いもテンポがよく、堅そうな題材なのに読み心地はとても楽しいです。
魔王討伐ではなく、王都再開発。
けれど、ある意味では魔王より厄介そうな相手たちに挑むこの物語。
これからどんな地主が登場し、ジンがどんな交渉術で向き合っていくのか、更新が楽しみです!
「勇者が泊まった由緒ある宿屋」「七千年生きるエルフ」「相続人が九十人いるオーク地主」——この三行だけで、この作品の面白さが全部分かります。
前世で赤坂の難件をまとめた転生プロ地上げ屋が、目覚めた瞬間からそろばんと図面の山に囲まれ即戦力として投入される——テンポの鋭さと、ファンタジー世界のデタラメな都市計画に職業病的にツッコミを入れる主人公ジンのキャラクターが見事に噛み合っています。
まだ2話・2179文字という生まれたての作品ですが、毎日22時更新予定で7話が一気に公開予定とのこと。「このライトノベルがすごい!WEB大賞」応募中の今、最初から追いかけるチャンスです。