三、

 フラッペが甘い。

 明里は、いつも苺だった。

「よく飽きないね」

 奈央がコーヒークリームのフラッペをかき混ぜながら言った。

「飽きないよ。好きなんだもん」

「そうかもしんないけど……」

 苺の香りが広がる。


  野瀬さん……


 明里の表情が硬くなった。

「明里?」

「……なんでもない」

「…………。なんか、最近おかしいよ?」

「そんなことないでしょ」

「あるよ。……あの、野瀬とかって子に会ってからだよ」


 …………。


「あの子なんなの? 中学の時がどうとか言ってたけど、近所の子?」

「…………」

「明里!」

「……中学の時の……同級生なの。不登校でほとんどいなかったけど」

「ふーん……それで、その⸻え?」

「…………」

「どういうこと……? あの子どっからどう見ても中学生だったよね?」

「…………」

「わかった! めっちゃロリで童顔なんだ!」

「…………」

「で、コスプレしてんだよ!」

「違う」

「え……?」

「違うの」

「……違うって……?」

「変わってないの。あの頃から、何も」

「………そ、それはだからさ、そーゆー人もいるってことで⸻」

「そのままなの。何もかも。ホントに……そのままなの」

「…………」

「また今度遊ぼって言ってたよね……」

「…………。な、なにビビってんの。ただ顔見せるかもってだけでしょ? 普通の人間なんだから、何もビビることないじゃん」

「……怖いの……。なんかわかんないけど……怖いの……」

「そんな……見た目が変わんないくらい……」

「そうじゃないの! そんなことじゃなくて⸻!」

「…………」

「……呑み込まれそうなの」

「…………」

「もう……帰って来れなくなりそうで……」

「…………」

 ふと、苺の香りが漂った。

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