深海の鯨 ー届かない声ー
朝比奈めい
孤独の火
52ヘルツの鯨に深く共鳴した。
声を出しても届かない。
一人で耐えて一人で抱えなければならない。
「世界は平等に残酷だ」と笑う声に
「嗚呼そうだな、君の言う通りかもな」と返し
ふと、その声の主は誰なのだろうかと考えたが
それは束の間、どうでもよくなって。
お風呂のお湯を溜めている数十分。
孤独の火を一人灯して煙草にそっと点火する。
「嫌になっちまうぜ」と嗤う声は
一体誰なのかと思うも深入りする思考は無くて。
私は誰なのか。
僕は何なのか。
頭に響く声は何なのか。
不思議の国に迷い込んだような気分だ。
「可笑しいね」「可笑しいよ」
嗚呼狂ってしまえば幾分かマシなのだろうか。
と思いながら平常を装うのは昔からの癖。
孤独の火を灯して煙草にそっと点火する。
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