高校時代、互いに惹かれ合いながらも、最後まで想いを伝えられなかった小野寺美鈴と高橋慎司。
親友を傷つけたくないという優しさ。
今の関係を失うことへの怖さ。
そして、ほんの少しずつ重ならなかったタイミング。
二人だけのモールス信号では、何気ない言葉をいくつも交わせたのに、一番伝えたかった「好き」だけは、最後まで届けられませんでした。
あと一歩、手を伸ばしていたら。
あと一言、勇気を出していたら。
そう思わずにはいられない場面の数々に、胸が締めつけられます。
けれど本作は、叶わなかった初恋を、ただ美しく悔やむだけの物語ではありません。
時は流れ、人は新たな出会いを重ね、それぞれの人生を選び取っていきます。
忘れられない人が心の中にいたとしても、その後に出会った人への愛や、共に築いた幸福まで偽物になるわけではない。
過去の想いを否定することなく、今そばにいる大切な人との時間も同じように慈しむ。
その誠実なまなざしに、何度も心を温められました。
人生は、選ばなかった道へ戻ることはできません。
それでも、選んだ道を大切に歩き続けた先で、途切れたと思っていた縁が、思いもよらない形で新しい春を運んでくることがある。
物語の中で静かに存在感を増していく、モネの《睡蓮》も印象的でした。
穏やかな水面に光や木々の影が幾重にも重なるように、一枚の絵へ、長い年月を生きた人々の記憶と愛情がそっと重なっていきます。
初恋の痛みも、大人になってから知る愛も、家族を思う温かな気持ちも、どれか一つだけが正しいのではありません。
伝えられなかった言葉さえ、決して無駄にはならない。
あの日、選ばれなかった春の先に、どのような未来が待っているのか。
人生の長い時間と、人から人へ受け継がれていく縁を、春風のような優しさで包み込んでくれる物語です。
このお話は、転校生に恋をした少女が、親友との関係や転校生の進路を前に、自分の気持ちを言いたくて、言えない、そんな青春ラブストーリです。高校では、サッカー、体育祭、学園祭、花火大会を通じて、三人の心が少しずつ近づいたり、すれ違ったりします。少女は転校生への想いを抱えながらも、親友の告白を受けて応援する側に回ったり、なんともやきもきする展開です。転校生は受験を理由に、恋愛には一歩距離を置こうとします。そして進路選択では、少女は家政系大学へ、親友は看護学校へ、そして慎司は医学部を目指します。少女と転校生の関係はどうなっていくのか、選ばれなかった春の続きはどうなるのか。みなさんも少女の恋をみとどけてみませんか。