「たぬきとは、愛すべき存在である」という書き出しで始まり、「田抜き」の語源説、たぬきそばの由来、冤罪としての化かし伝説と、論文のような語り口で淡々と「考察」が積み上げられていく。文体が真面目で丁寧なのがかえって面白く、読んでいるうちに「なるほど、たぬきは不当に風評被害を受け続けてきたのか」とじわじわ引き込まれる。
そして最後の一行。
「なぜならば、全部嘘だ。」
この一行のためだけに、1600字が存在している。タイトルの「一考察」という真顔の学術感と、「全部嘘だ」という潔すぎるオチの落差が完璧で、たぬきに化かされた読者の一人として、思わず笑ってしまう。
「作者すらも化かされているのだ!」という既存レビューのタイトルが言い得て妙だが、本当にそのとおりだ。作者がたぬきに化かされて書いた文章を、読者がたぬきに化かされながら読むという二重構造が、1話完結1600字の中に収まっている。
完結済み1話。今日投稿されたばかり。Yu-Ma氏の本命連載「黒の戦士団」も気になるが、まずこの掌編一本でこの書き手の遊び心と文体の確かさが十分に伝わる。