幕末を舞台に、身分の違う二人が数年をともに過ごす物語。片方が言葉で関係を決め、もう片方は言葉では返さない。その非対称が、最初の会話から最後まで静かに続いていきます。何気ない小道具や言葉づかいが、読み進めるほど別の重さを持ってくる構成で、読み終えたあとに「あの場面はそういう意味だったのか」と戻ってくる余韻があります。きれいに答えを出し切る物語ではなく、残された問いや、言葉にされなかった関係の重みを味わいたい人に読んでほしい作品です。