静かな青空の下で、自分の存在そのものの有り様を問いかけられているような、何とも言えない美しく幻想的な作品。
私が感じた感情を、私はうまく書けない。
だから、これは読んでいただくしかないのだと思う。
廃校の屋上という閉ざされた場所が、主人公にとっては空に一番近い場所であり、過去、現在、孤独とつながりを結ぶ特別な場所として描かれているのがとても印象的。
少女との出会いは一見すると不思議なファンタジー。
ただ読み進めるほどに「人間になる前の記憶」「忘れるということ」「誰かと巡り合う意味」へ物語が広がっていく。
鳥だった頃の記憶を取り戻す場面は圧巻!
翼の重さや風を切る感覚を通して、主人公が失っていたものは記憶だけではなく世界とのつながりだったのだと感じる。
高校生が書いたとは思えないほど、文章には成熟した感性と深い思索がある。
青い空、鳥の羽音、春の冷たい風。
その一つ一つの描写が、読者自身の中に眠っている「忘れていた何か」を呼び起こしてくれるような作品。
くどくなってしまうのですが、少しだけ補足させて欲しい。
この作品のすごさは「転生もの」にありがちな前世の記憶を取り戻して能力を得る話ではないところ。
主人公は鳥だった記憶を取り戻しても、何か特別な力を手に入れるわけではない。
ただ、「自分はずっと空とつながっていた」「苦しみも涙も、人間として生きている証だった」と気づく。
ただただ、その小さな変化を描いている。
また、少女が「猫だった頃のことも覚えている」と語るところもとても良い。
猫という存在を出すことで、輪廻転生が人間だけのものではなく、世界全体を巡る優しい視点になっている。
高校生でここまで「喪失」と「再生」を静かに描けるとは。才能ってこういうこと。
文章力だけではなく、何を描きたいのかという核が最初からある作品だと感じた。
カクヨム甲子園でこれが評価されるかどうかわからない。
ただ、この方の文章力は本物。
高校生なんだよなぁ。
この方の目に、高校はどんな世界に見えているんだろう。
この方の日常を覗き見したくなってしまった。
そして、この方が通っている高校の先生方に
この方はどんな方なのかと話を聞いてみたいような気持ちになった。
ちゃんとこの方を正当に評価できているのかなあ。
そんなことを思った。
読んでみて欲しい。すごいから。
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