「淫紋術」読んで字のごとくの効果もあるものの、それはほんの一部。
このような効果の発動の仕方もあったのかという驚き。
主人公は、元傭兵、今は娼館勤めの淫紋術師アルテ。
主人公とともに行動するのは、同じ娼館に勤める新人の少女。平穏に暮らしたい主人公だが周りがそうはさせてくれなさそう。
主人公は安定感のある強さ。新人の少女は、ちょっと抜けた感じでかわいいけど、その言動はトラブルメーカーな雰囲気もある。この二人がともに行動すると、何かが起こるという期待が膨らみます。もちろん何かが起こる!
【第17話まで読んでのレビューです。】
【レビューコンテスト応募】
高級娼館『黄金の繭』で働く元英雄アルテ。
彼が扱う 淫紋術 は本来、夜のための技術――にもかかわらず、彼の手にかかれば性病の予防や治療までこなす“頼れる医療技術”へと変貌する。
この 「エロ限定の力じゃない!」 という逆転の発想が作品の核で、能力バトルとしての面白さを一気に押し上げている。
平穏を望むアルテの周囲で、少しずつ綻び始める日常。
娼館を探る尾行者、スラムの異変、記憶喪失の少女、王国軍との衝突――
陰謀と因縁が次々と押し寄せ、彼は望まぬまま戦場へ引き戻されていく。
淫紋術は敵の痛覚を増幅し、仲間を強化し、触れたものを武器へ変える。
「こんなものでも十分に凶器になる」
指先ひとつで戦況を覆すアルテの戦い方は、知恵と工夫で勝つ能力バトル の醍醐味そのもの。
キャラクター同士の軽快な掛け合い、一癖ある能力の応用、徐々に広がる世界観と陰謀のスケール。
人情と頭脳戦が絡み合うことで、物語はただの成り上がりではなく“望まぬ最強の再出発”として深みを増していく。
夜の術が戦場を制し、平穏を愛する男が再び立ち上がる――
異色の能力バトルファンタジーとして、強烈な個性を放つ一作。
「淫紋術」、すごいパワーワードです。
思わず調べてみました。
それほどに「その響き」だけで、牽引力があります。
紐解くと、2010年以前のネット界隈ではすでに生まれていたようで、その名称こそ知らなくても、セクシャルなキャラクターのスパイスとして見たことはある、1つのキャラクター造形になります。
レビュー冒頭から、余談となりましたが、本作は、その「淫紋」を、作者様の手腕により、主人公の設定に練り上げられています。
また、舞台設定も「娼館」という妖艶な非日常としつつも、、そこに生きる人々との温かい交流や、時折見せる主人公の圧倒的な強者としての背中に、格好良さと不思議な安心感を、読者に与えることに成功しています。
キャラクター造形としては、「淫紋」というパワーワードだけでなく、元英雄という設定を活かした重厚な戦闘描写は爽快感を形成しており、WEB小説のトレンドも踏襲して、主人公の意図せぬところで評価が爆上がりしていく「勘違い」も巧く盛り込まれていて隙がありません。
「淫紋」という字面だけで、嫌煙することはない位に、作品として仕上がっており、テンポのよい会話と展開は、読者を飽きさせないリーダビリティを発揮しています。
平穏な隠居生活を望んで娼館の裏方に徹する元英雄の少年が、規格外の技術と実力を隠しきれずに周囲から勝手に最強と崇められていく、爽快感と勘違いに満ちたファンタジー。
タイトルに驚いた方、まずは、ぜひ読んでみることをおすすめいたします。
【レビューコンテスト応募】
アルテが望んでいるのは、名声でも富でも、かつての強さを誇示することでもありません。
働いて、誰かと言葉を交わし、今日のパンをおいしく食べる。
そんな、ささやかな平穏です。
けれど読み進めるほどに、その「平穏」が、ただ自分だけが静かに暮らせればよいという願いではないことが伝わってきました。
偏見にさらされながら働く人の尊厳が守られること。
倒れた相手から必要以上に奪わないこと。
名も知らない誰かであっても、生きている可能性があるなら見捨てないこと。
そして、亡くなった人が名を刻まれ、きちんと見送られること。
アルテにとっての平穏とは、誰かの命や暮らしが、当たり前のように踏みにじられない日常なのかもしれません。
だから彼は、面倒を嫌がりながらも、結局その指先を伸ばしてしまう。
軽口を叩き、ぼやきながら、それでも守るべきものの前では決して退かない。その姿が、十四話まで読むうちに、たまらなく格好よく見えてきました。
明るい日常のすぐ隣で、少しずつ深まっていく不穏な謎。
平穏を愛する男が、その平穏を守るためにどこまで歩いていくのか。
続きを追いかけずにはいられない物語です。