言わずもがなではあるが、この作品は一世を風靡したカクヨム発のモキュメンタリーホラー『近畿地方のある場所について』のパロディである。
だが思い出してみて欲しい。『近畿~』も第一話はAV違法転載サイトをネタにしたモキュメンタリーホラーのパロディであったことを。
パロディというものは得てして出オチなのであり、単発で終わることがほとんどだが、この『親指と親指の間のある場所について』は現時点(R8.7.10)で35話14万字超が投稿されている。わたしには、この事実が恐ろしい。消されてもペニスの落書きを書き直す存在の執念と同じぐらいに恐ろしく思う。
また、どの話もとても読ませる内容だ。ペニスの落書きという主軸をもちつつも、俳句短歌であったり旧車會の座談会であったりと、あの手この手と多種多様な仕掛けでもって読者へ挑んでくる。我々は「ああ、なるほど」「ほう、今度はそうきましたか」とスワイプする指が止まらなくなってしまう。
ちなみにわたしはLINEのアイコンを、旅先で撮った、青空を背景に岬にそびえたつ白い灯台の写真にしている。もちろんこれが猛々しいファルスのメタファーであると強く意識してのことである。
隠しても仕方ないからもう伏せ字にせずレビューにすると、ちんこの話である。親指と親指の間にあるのは? もちろん、ちんこ。もろちん。
ちんこ、それは本作ではきちんと男性器のことを指す。
ちんこの落書きを描く異常性を持った怪異(一周回って正常かもしれないが)と、それを解剖学的に正しく描き直したいという人間の欲望と、描き直された絵を見て怪異の画力が向上する、という怖がっていいのか笑っていいのかわからない話から始まる本作は、そのモチーフからは想像もできないくらいホラーをしている。
モキュメンタリーホラーにまだこんな鉱脈が! という発見もあるし、ちんこの話という時点で心の男子中学生が爆笑するし、読んだら後悔するレベルで残る胸のざわつきがある。
ちんこの落書き、多分田舎ならどこにでも一つくらいはあるはずで、妙なリアリティを感じて自分ごとのように思えてくる。
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