百合コンテスト応援です。
しかしただの百合と思うなかれ。重厚なファンタジーと文学的描写力の強さに圧倒されます。
どっしりした世界観の中から始まるのは、王子様になりたい令嬢ルシエラと、貧民街で糸を紡ぐ少女リディ。
美しい容姿のルシエラは母親の「お人形」にする教育の賜物で見目麗しく成長するも、とうの本人は屋敷を抜け出して大好きなリディのところへお忍び。
本来互いの身分も違い、まして女性同士。何が始まるでも結ばれるでもない関係性の中で、二人は友情とも友愛とも言えぬ感情を高めていく。
特に祭りに神鹿のあざを隠して二人で楽しく二人の女性として過ごすシーンは胸が熱くなります。写真屋がいい仕事しているので詳細は本編にて。
身分違いの恋の中で、リディが綴る日記は後半に向けてルークの愛にあふれており、
好きだから離れる、という決断を迫られる。
ルークも大好きなリディが自分を好きでいてくれる、彼女の決断を受け入れようとした矢先に語られる「神鹿の花嫁」の真実。
敵は神鹿。この花嫁に選ばれた人間は幸福を得ることができるので、貧民街から選ばれたリディはそれはそれは家族からも貧民街の住人からも拝み倒されるほど喜ばれております。ましてお転婆ルークを屋敷に縛り付けたいルークの家族もリディが花嫁として離れてくれることでやっとお転婆が落ち着いてくれるとほっと一安心……
じゃないんですよ!!
この重厚な世界観と物語の構成力はレビューでは語りつくせないほどの味わいを持っております。
連日更新されているので、実は貯めて読んだ方が世界にどっぷりと浸かれるのでお勧めですが、毎話を追いかけてもどちらにしても続きが気になりめくる手をとめられません。
どんでん返しとハッピーエンド保障の王子様になりたい少女と、神鹿に選ばれた花嫁の結末やいかに!?
引き込み力の強い文章力に気づいたら最新話。問題は気づいたら時間が溶けていることくらいでしょうか。
嫉妬しかないくらいの引き込み力の強い文章と一人称なのにすべてがモーションで見える不思議な作品(一人称は神視点になりがちなので、ここまで丁寧に見える描写ができるのはとんでもなく上手い書き方の人なのです)
個人的に百合作品をとある事情からほぼ読まない私が全力で押す作品です。
レビューで百合部分が全然推せてない…い、いや、あのご褒美シーンはたくさんありますよ!
具体的に言うと恥ずかしいのですが、髪を梳く、髪飾りをつける、首筋にキス、同じ場所をかじる、一本のストローを一緒に使う。手をつなぐ。そんな些細な日常の動作ひとつひとつが美しくすべてがご褒美です。
主人公のひとりは、王子様に憧れる少女。
正義感に溢れて武芸に優れた彼女は、雁字搦めにしてくる家にも社会にも果敢に剣を突き立て抗っている。
もうひとりの主人公は、貧民街で暮らす糸紡ぎの少女。
彼女のまた、貧しい暮らしの中にありながら家族を想い、文句ひとつ言わずに糸を紡ぐ。
そんな戦いの中にある少女たちが
出会い、そして惹かれ合う。
立場の違う2人なのに、まるでもともとひとつであったように、お互いの心を満たし合う描写には
幸せなため息が漏れます。
ああ、恋ってこんなに素敵。
ああ、大切な人ができるのって、こんな気持ちの積み重ねだと、
じっくりじんわり思わされるのです。
その感情へ誘うのは作者様の熱のこもった美しい描写力です。
日記というモチーフを使いながら、こちらに向けて語りかけてくる少女たちの言葉は
思い遣りに溢れ
時に剥き出しで
心を抉って、溺れさせるのです。
だから苦しくなる。
心から応援したくなる。
今はまさに、彼女たちの前に試練が迫るとき。
相対する相手はなんと、神様だ。
味方などいない。
振るう剣に勇気をくれるのは、お互いへの想いだけ。
美しいのにどこか泥臭い。だからこそ寄り添える。
そんな生命の匂いに満ちた作品です。
ぜひ五感で感じてください。
彼女たちの「幸せ」まで、ずっと。
あらすじの『神に運命を奪われた少女』と『王子様になろうとした少女』のロマンファンタジーの文字を見た直後、私の中のドーパミンが溢れ出ました。
「あらぁ! 心の底から読みたかった作品ですわね?!」
一呼吸し、クリックして読み進めていくと、『身分差×純愛×救済』というアフタヌーンティーのように愛くるしいテーマでありながらも、主人公たちが葛藤していく緊迫シーンも。
五感を刺激する甘美なコントラストは、尾白景先生の作品でしか味わえない、至福の百合物語なのです。
本編は勿論、近況ノートの世界観も、とても素敵。
ドーパミン・セロトニン・オキシトシンの幸せホルモンが溢れ出る、美しいひと時をお楽しみくださいませ。