誰かを好きになるきっかけは、運命のような一目惚れかもしれないし、時間を重ねる中で少しずつ育っていく恋かもしれません。
けれど、誰かを好きになること自体はこんなにも簡単なのに、思い出を手放し、過去と向き合い、自分自身がきちんと次の恋を始められるようになることは、恋愛の中で多くの人が何度も直面する難しさなのだと思います。
とはいえ、前の恋を忘れる方法が、次の素敵な恋に飛び込むことだったりするのも、また事実なんですよね(笑)
悠吾と未来は、決して「正しい」とは言えないタイミングで出会った二人なのかもしれません。
でも、もしかしたら、そんな正しくないタイミングだったからこそ、二人にとっての「正しい答え」に辿り着けるのだと思います。
雨が降る降る、ぽろぽろと……。
序盤を読み終えふと見上げた空には、薄灰色の雨雲が立ち込めていました。それはまるで、見過ごすことの出来ない恋心の訪れのようです。
大空さんと雨宮さんの重ねる時間は、一見すると何気ない日常の連続。
手に伝わる缶コーヒーの温もり、雨に濡れて少し透けるブラウス、少し大きめのジャケット。
けれど言葉を交わす度、二人の心には、キャンバスに落とした水彩絵の具のように、静かな想いがしっとりと滲んで行くのが分かります。
しかし、そんな穏やかな交流の最中に現れたのは、大空さんのかつての恋人。
「もう一度」と揺さぶる彼の仕草にも、また確かな愛があって……。
丁寧なストーリー構成と、青葉に光る水滴のような澄んだ優しさを感じる作品です。
一話一話がコンパクトなので、隙間時間にぽつぽつと読めるのも魅力。
雨の東京にそっと広がる、綺麗で切ない恋模様。貴方も覗いてみませんか?
※本レビューは、プロローグ+第一幕(全7景)までを読んでの感想です。この先は自分の萌えを制御できる自信がないので、一旦ここで筆を置きます。
正直に告白します。読み始める前は「作者さんの前作『MER:AI《ミライ》』の参考に、少しだけ覗いてみるか」くらいの軽い気持ちでした。気づいたら、雨宿りの部屋も、缶コーヒーも、彼シャツも、無防備な寝顔へのキスも、全部きっちり味わい尽くしていました。うひょー、まいりました。
この作品の一番の魅力は、間違いなく大空未来というキャラクターへの、作者さんの本物の愛だと思います。細身で儚げで、健気で、それでいて自分の想いにはまっすぐ——こういう造形の女性が好きな人間にとっては、正直イチコロです(自分がそうでした)。しかも、これは『MER:AI』のミライ、湊快といったキャラクターたちと地続きの、いわば”愛の続編”なんですよね。一作を書き終えてなお、このキャラクターたちを描かずにいられなかった、という熱量そのものが行間から伝わってきます。
彼シャツ、雨宿り、看病キス——正直、使われている記号自体はどれも王道中の王道です。でも読んでいて一切のチープさを感じさせないのは、香りの残り香や、雷光に浮かぶ一瞬の淋しげな表情など、五感を伴った細部の描き込みが、テンプレートをちゃんと”生きた場面”に変換しているからだと思います。記号を恥ずかしがらずに使い切る胆力と、それを支える描写力、両方が揃っているのは強いです。
そして一つ、どうしても触れておきたいことがあります。作者さんは、「儚げな女性が男性から上着を着せてもらう」というシチュエーションが、本当に、心の底から好きなんだと思います。 『MER:AI』でも全く同じ流れの場面があり、今作でも変わらぬ純度でもう一度描かれていました。これは指摘というより、もはや確信に近い賛辞です。作者さんの中で、この一瞬こそが”尊さの結晶”なんだろうな、と。分かります。彼シャツのシチュエーションが嫌いなパーソンいる? いねえよなぁ!!
第一幕ラストの告白、そして零という元カレの影——ここから台風のように物語が荒れていく予感がすごいです。次を読むときは、たぶん「うひょー!」「そこ零、来るな!」とか叫びながら画面の前で悶えると思います。楽しみすぎます。
RT企画より参りました。
オフィスを舞台にした、雨のように切なくも重い三角関係の幕開けを描いた素晴らしいエピソードです。梅雨のじめじめとした空気、濡れたブラウス、そして熱を出した悠吾の唇に残る記憶など、全編を通して「雨」と「五感」の使い方が非常に秀逸で、二人の距離がじりじりと縮まっていく様子がリアルに伝わってきます。
しかし後半、完璧なエリート元カレ・零の登場によって空気は一変します。スマートな表の顔と、悠吾に向ける嫉妬に満ちた冷徹な裏の顔のギャップが恐ろしく、未来の耳を這う冷たい指の描写にはゾクリとさせられました。嵐の到来と共に加速する、三人の歪な関係の行方から目が離せません!