交差点
WONDERZ 第48話
交差点
「
「な!?」
風の男が驚く。
「穴だと思ってましたが…!」
風の男は唇を強く噛んだ。
「いつまでも穴じゃいられねえんだ…!」
グッとライターを握り直した武尊は、安堵の笑みを浮かべる。
「これで…自分で戦える…!」
「武尊くん…!」
森田も思わず笑みを浮かべた。
「まだ油断しないでください!」
久瀬の声が飛ぶと同時に風の男は武尊を睨みながら腕を振るう。
「
暴風が部屋中を吹き荒れる。
「くっ…!」
武尊は咄嗟に腕で顔を庇った、その瞬間。武尊の拳に微かに燻っていた炎が風を受け、大きく揺らぐ。
「……!」
炎は渦を巻くように膨れ上がる。
「武尊くん!?制御して!!」
森田が叫ぶ。
「ち、違…!」
武尊は炎を抑え込もうと拳を握る。
「止まれ…!」
ゴォォォォォッ!!!
炎は風を喰らい、部屋いっぱいへと爆ぜた。
「伏せろ!!」
久瀬が叫ぶ。
爆風が部屋を吹き飛ばす。窓ガラスが砕け、壁が軋み、天井の照明が次々と落下する。武尊たちも敵たちも区別なく炎の衝撃に飲み込まれた。
「ぐあぁぁっ!!」
「うわぁぁ!!」
全員の身体が吹き飛び、暴風が割った窓から中庭へと放り出される。それぞれが地面へ叩きつけられた。
「いてて…みんな大丈夫か…?」
顔を上げた武尊の視線の先で高円寺の拳を前澤が受け止める。前澤は武尊たちを一瞥すると、小さく舌打ちした。
「何やってんだテメェら…!」
「前澤さん…!」
武尊たちはすぐに前澤が劣勢なことに気付くが、前澤と高円寺のプレッシャーに、近付けずにいた。
「そこに転がってひっくり返ってんのはお前んとこのやつか…?」
前澤は高円寺の攻撃を防ぎながら、武尊たちと一緒に落ちてきた気絶している三人を見て言う。
「ああ、そうだな…!」
「そうか…メガネ!!」
前澤は振り向くことなく叫ぶ。
「全部回ったか!」
「一階、二階、最上階!」
森田が即座に答え、久瀬も頷く。
「そうか…!」
高円寺の視線が一瞬武尊たちの方へ向いた。その隙をついて前澤は高円寺の懐へ踏み込む。
「
高円寺の足元に溜まっていた水たまりがキラキラと輝く。
「なんだ……?」
「悪りぃな。」
ガギィィイン!!!
高円寺の足元に溜まっていた水溜まりが強く硬い氷の柱となり高円寺の足を膝まで覆った。
「さっきまでの柔いのとは大違い、今の俺にできる最高硬度だ。お前に勝つのは今じゃねえ、一旦お預けだ。引き分けといこう。」
「引き分けだと…?」
ピシッ
高円寺の足元の氷は細い亀裂が入る。
「バケモンが…!」
前澤は苦笑いを浮かべながら高円寺に背を向けて反対方向へ走り出す。
「あれじゃもって一時間てとこだ、急いで中行くぞ!地下の場所は!?」
「わかりません…!」
森田が答えた。
「そうか、さっさと探すぞ!」
前澤が合流し、五人となった捜索隊は全員で建物の中へ入った。走りながら前澤が問う。
「お前らさっきの女は」
「森田が倒してくれました」
武尊が答えた。
「そうか、よくやった。次代様は余裕って感じか、郷原が飛び出してったな。止めなかったが、役に立ったのか」
「ええ、助かりました」
久瀬が答えた頃に、重厚な扉に差し掛かる。
「あれか…!?」
武尊は手に汗が滲むのを感じた。
「気合い入れろお前ら…!」
前澤が扉を開ける。中からは冷たい空気が上がってくるのを感じた。
「イヤに静かですね」
久瀬が言う。
「やはり、予想が当たってしまったかもしれない」
「どういうことだ?」
郷原が言う。
「そういえばさっき言いかけてたね、久瀬くん。もしかしたらって…あれは」
森田の言葉に久瀬が返す。
「所長たちを拉致しているにしては人数が少ないと思ってました。戦力を分散したり、諜報員を潜入させるほどに計画的な組織にしては、明らかに
階段を降りきった五人の前には、すでに空となっている地下室が広がっていた。ロウソクは燃え尽き、開いたままの鉄の檻、そして柱の近くにはロープが置かれていた。
「遅かった……?」
森田が拳を握りながら言う。
ガァン!!!
武尊は奥の鉄の檻を拳で打った。
「……くっそ…!」
戦いがあることも覚悟した。そこに真樹がいると思った。戦える力も持った。この扉の先に進めば──
武尊の中の積み上がった覚悟と希望は、音を立てて崩れた。
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