『シティーハンター』の伝言板に「XYZ」を書きに行く、というファン心理の純粋さがそのまま699文字に詰まっている。「伝言板撤去」という時代の流れを告げるニュースが、若き日の自分を新宿駅へ駆けつけさせた、という動機の素直さが微笑ましい。
人の目を気にしながらチョークを取る、という一瞬の躊躇いの描写が、ミーハーであることの恥じらいと喜びを同時に伝えている。実話風の語りならではの温度感が、単なる懐古ではなく「あの時代にしかできなかったこと」への愛着として伝わってくる。
短い掌編だからこそ、読後にふっと自分の若い頃の似た瞬間を思い出させる力がある。