2000字足らずの第1話だけで、これほど先が読みたくなる作品はなかなかありません。
最大の魅力は「月がない世界」という設定の詩的な必然性です。月は自分では光らず、他の光を借りて輝く——その説明が、退屈な毎日を生きる主人公「三」の姿と静かに重なります。欠けているのは夜空だけではない、という読後感が、短い文章の中にちゃんと宿っています。
「夢ノート」に書かれた三行目が何だったのかを明かさずに終わる構成も巧みでした。読者も三と一緒に「それは何だろう」と旅に出たくなる。そこへ盲目のヴァルの「私の目ではもう、叶わない」という一言が落ちてくる終わり方は、掴みとして申し分ありません。
文体は平易でテンポがよく、一人称の焦りと落ち着きの切り替えも自然です。続きが毎週日曜更新とのこと、楽しみに追いかけたい作品です。