人と、人ざるもの。
異種間恋愛、なんて言葉で語るには足りない。
初めは偶然だったかもしれない。
送り犬にとって、最初千春は特別な人ではなかったかも知れない。
送り犬の住処に通じるような、
美しい山里を故郷に持つ、ごく普通の女の子。
おっとりとして危機感が薄く、ちょっと危なかっしい。
それだけで、離せなくなるだろうか。
それだけじゃないのが「恋愛」へと至る種になるわけで。
最初に贈ったのは、「名前」。
それを送り犬は「覚えた」。
そこから逢瀬のたびに、
幾度となく贈られる言葉と「覚えた」の返し。
終盤で千春がその言葉に「未来」を感じる。
それは彼らが互いに描いていた願いであり、
成就の時を心待ちにしていると
確かめあうような共通認識であったのだと思いました。
人間の世界の言葉と、送り犬の中での認識と。
2人の間で交わされたときの意味もまたひとつ。
そうして築かれていく2人の世界の形をきっと「恋慕」と呼べたら素敵だなと思いました。
そうして、読み手の心に美しい風景と生まれたての世界を開いてくれる
そんな鮮烈であり、生身の熱に溢れた物語です。
出会う前とあとでは、きっと景色が変わる。
そんな珠玉の物語にぜひ、出会ってください。
わたしは、この物語に出会えて幸せです。
山の怪異、送り犬。カッコよくもあり、かわいくもあり。送り犬と女子大生・千春の異類恋愛譚です。
送り犬と千春の会話がずっと聞いていたくなるような心地よさがあります。
送り犬は人間のいろいろな概念を知らないので、千春が教えていくのですが、それを送り犬はいちいち覚えて…それがのちにたまらない萌え萌え沼の種に…。
この関係性、ほかで見たことない…。
読んでいて何回もんわーって叫んでしまいました。
住む世界の違う2人なので、先がどうなるかわからない切なさはもちろんのこと、山の神様に許された逢瀬の残り回数でハラハラ。送り犬の正体を巡る民俗学的謎解きのドキドキもあり、男女ともに楽しめると思います。
あと、千春と送り犬を外の立場から見守る視点もあり、全体のバランス感を絶妙にしていると思いました。
前作の絵本のような、昔話のような美しい作品『送り犬』ともども、とてもおすすめです!
【レビューコンテスト応募】と記載させていただきます。
日出ずる国の深き山々には、今も古来からの言伝えが息づいている。
本作は、怪異譚という名の、極めて美しく切ない昔話。
異界の山に迷い込んだ少女と、彼女を静かに見守る大狼様。
人間とは全く異なる価値観を持つ神道的な神秘のなかで、二人が紡ぐ時間はどこまでも優しく、静寂な空気に満ちている。
『 待てとヨシ! 』を真面目に覚えていく大狼様の律儀な歩み寄りには、作者様の温かさがこれでもかとにじみ微笑んでしまいます w
言葉を交わすたび、少しずつ重なっていく少女と大狼様との静かな愛。
それは、日本の精神が宿る山々の息吹そのもののように、読む者の心をじんわりと満たしていきます🥰💕
孤独な二人が存在を認め合う、珠玉の異種恋愛ファンタジーかな?
この優しくも厳かな愛の詩を、ぜひ見届けてほしい🫶💕✨
「送り犬」という言葉に、悪い意味や、もしかすると背筋が凍るようなホラーを想像するかもしれません。しかし、本作はそんな期待を優しく裏切る繊細で心温まるファンタジーです。
物語では、かつて山で自分を送り届けてくれた送り犬と、四年の時を経て再会した主人公の交流を、丁寧な筆致で描いています。
送り犬は人間と全く異なる価値観を持ちながら、千春が教える言葉を一つずつ真面目に覚えていき、文字通りその距離を縮めていく。
それが、とても優しい。
人ならざるものとの間に甘くもどかしい空気を生み出す関係こそが、本作の最大の魅力です。
怪異の住まう山の不穏さと、二人の間に流れる穏やかな時間の対比が絶妙な作品で、千春の抱える孤独と、送り犬の無垢さが重なる瞬間、わたしは胸を締め付けられるような切なさを感じました。
言葉を持たなかった存在が、千春を通じて世界と繋がっていく姿は、ただの恋物語を超えた、深い信頼と愛おしさに満ちています。
優しく、時にじれったい。読後には、心に小さな灯火がともるような温かさを感じられる素敵な作品です。ぜひお読みください。
【レビューコンテスト応募】
祖母の七回忌を終えた千春は、かつて祖母の畑で迷い込んだ山へ足を運ぶ。
四年前、そこで彼女を助けてくれたのは、人の言葉を話す大きな黒い犬――「送り犬」だった。
このような導入と、送り犬が怪異としてではなく「人間とは価値観が違う存在」として描かれている点に、強く惹かれました。
物語に漂う静けさの中にも不穏さがあり、「三つの月」や「山の神の不在」といった設定が、怪異とのバランスを際立たせています。
千春は家族を大切にする普通の女性であり、だからこそ親近感を持って歩み寄ることができます。
やはり魅力的なのは、送り犬の存在です。
行動の一つ一つに垣間見える優しさや、孤独な者同士の寄り添い方には、現代社会にも通じる深い示唆を感じました。
人間と妖の価値観の違いも面白く、「帰る場所」というテーマも読み応えがあり、心に残る魅力的な物語です。