一見すると、ただのスーパーの募集要項と「調理指示書」のレシピですが、これが小説として提示されている点にゾクゾクさせられます。「1〜30」というタイトルがあることから、読者は「今は普通の唐揚げだが、番号が進むにつれてレシピの内容や指示書が『普通ではない何か』に変貌していくのではないか」という、モキュメンタリー・ホラー特有の不穏な期待感を抱かされます。
「ブラジル産・角切り4.0kg」「中心温度計で75℃以上1分以上保持」「パセリを1葉添える」など、実際のスーパーのバックヤードを知る人が書いたとしか思えないほどディテールが完璧です。
この徹底した現実感が、物語としての没入感を跳ね上げています。
求人票にある「接客やレジ業務は一切ありません。裏方作業に集中できる環境」という文句が、物語の舞台として非常に機能しています。
外の世界から隔絶されたバックヤードで、黙々とデータ入力や調理、ラベル貼りをこなす孤独な空間だからこそ、奇妙な事件が起きても外に漏れないという不気味さが際立ちます。