語り口から伝わってくるのは、民俗学的な伝承を実際に聞かされているかのような、丁寧で穏やかな筆致です。「かんわら様」「ひる様」という呼び名の響き、子供にしか見えないという設定、本殿に立ち入った大人に下される祟りの掟、そうした細部が一つひとつ積み重なり、寂れた漁村に確かに息づいていた信仰の姿を浮かび上がらせます。死を悼みながらも、それを呪いではなく恵みへと転じる村人達の祈りの姿には、悲しみと豊かさが同じ場所に共存する独特の質感があります。今もなお幼子に手を合わせる老人の姿に、かつてそこにあったものの響きを聞き取れるかどうか、奥行きの深い作品だと思います。