第12話 音のある家と隠し機能
夕暮れ。
激戦の後とは思えないほど、空は穏やかだった。
ミオはゆっくり目を開ける。
「……ん」
見慣れた天井。
自分の部屋だった。
「起きた?」
隣から声。
ユナが椅子に座っていた。
「うわぁっ!?」
ミオが飛び起きる。
「なんでいるの!?」
「運んだの私たちだけど?」
後ろではソラとルナがゲームしていた。
「勝ったー!」
「ずるい」
完全にくつろいでいる。
「なんで人の家で満喫してるの!?」
ミオはハッとする。
「ビート!」
机の上。
小さなビートが静かに置かれていた。
外装はボロボロ。
目の光も弱い。
ミオが駆け寄る。
「大丈夫!?」
ビートがゆっくり目を開く。
「……生きてる」
「よかったぁ……!」
ミオは思わず抱きしめる。
ビートが少し照れたように点滅する。
「近い近い」
「ねぇ」
ミオが真剣な顔になる。
「ビート、あれ何」
部屋が静かになる。
ソラとルナもゲームを止めた。
ビートは少し黙る。
「……今は全部話せない」
「でも」
小さな声。
「ミオを守るための力」
それだけ言った。
ミオは少し不満そうだったが、それ以上は聞かなかった。
「……そっか。」
その後。
ミオは作業机に向かっていた。
工具。
電子パーツ。
音響基板。
普通の女子高生の部屋ではない。
ユナが引いている。
「ミオの部屋、工房なんだけど」
「よく言われる」
ビートは机に寝かされている。
「修理開始するよ」
「優しくお願いします」
「壊したの誰だと思ってるの」
「ごめんなさい」
ソラが笑う。
「ビートって普段ポンコツなのに戦うと超かっこいいよね」
「ギャップ萌え」
ルナが真顔で言う。
「萌えって言うな!」
ビートが赤く点滅する。
修理中。
ミオは内部データを見つける。
「……ん?」
隠されたモード。
【ZERO DRIVE】
時間制限
2分30秒
ミオが首を傾げる。
「これ何?」
ビートが一瞬止まる。
「……非常用」
「今のボクでも、一時的ならゼロビートに戻れる」
部屋が静まる。
ソラが驚く。
「またあの姿になれるの!?」
「でも」
ビートの声が弱くなる。
「長時間は無理」
「コアが壊れる」
ミオの表情が曇る。
「そんな危ないの使わないでよ」
ビートは少し笑ったように光る。
「でも、守れるから」
ミオは少し黙り。
そして工具を握り直す。
「……もっと丈夫にする」
「絶対壊れないくらいに」
ビートは静かにその姿を見ていた。
夜。
キッチン。
「いただきまーす!」
今日はオムライス。
ソラが大喜び。
「うまっ!!」
ルナも黙々と食べる。
「しあわせ」
ユナが呆れる。
「ほんと自由だね君たち」
ミオは笑う。
久しぶりだった。
こんなに賑やかな食卓。
ビートはテーブル中央。
「ボクも食べたい」
「無理でしょ」
「精神的に食べる」
「何それ」
みんなが笑う。
その空気を。
ビートは静かに見つめていた。
どこか懐かしそうに。
みんな帰った後。
ミオはベッドへ倒れ込む。
「つかれたぁ……」
ビートが隣へ飛ぶ。
窓の外では夜景が光っている。
静かな時間。
ミオが小さく呟く。
「……ビート」
「なに?」
「ありがとね」
少し間。
ビートが小さく光る。
「うん」
その声は。
どこか優しかった。
ミオが眠った後。
部屋は静寂に包まれる。
その中で。
ビートだけが起きていた。
窓の外を見る。
遠く。
夜空の向こう。
微かに広がる黒いノイズ。
そして。
小さく呟く。
「……時間がない」
その瞳に映るのは。
迫り来る、終焉の影だった。
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